三代目徒然なるままボヤッキーニッキー

Mrダーシーは今日は幸せ(40)
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    第四十章


    法的手続きが済んで、ビングリーとMissジェーン・ベネット、そしてダーシーと彼の最愛のエリザベスの結婚が、計画通りに執り行われると、数日内にダーシー夫妻はダービシャーに向かった。
    この時期にしては天候は上々で、ダーシーは大きな喜びを感じつつ、エリザベスに屋敷を案内し、また領内を歩いたり馬車で廻ったりしていた。数ヶ月前に彼女の叔父と叔母と共に辿った小川沿いの小道は、二人にとって特別な思い出のある道だった。ダーシーは花嫁を連れて、リディア・ベネットの駆け落ちのせいでお預けになった、荘園を二頭立て二輪馬車で二人でドライブすることもできたのだった。
    ペンバリーにいた時にこれ以上幸せな時があったか彼には思い出せず、エリザベスにもそう言うのだった。
    間もなくクリスマスという頃、彼らの許にジョージアナが、そしてガーディナー夫妻が子どもたちと共にやって来て、祝祭の季節を気が置けない心地よさとたくさんの笑い声で祝おうとしていた。ダーシーは、そのうち邸内で子どもの声が歓迎されざる客の声になるかもしれないな、とエリザベスをからかっては家族の前で赤面させた。彼女は穏やかに、だが明るい笑顔でその可能性はあるので、彼のお望みのままにと認めたのだった。
    花嫁が易々とペンバリーの切り盛りをしていくやり方が次第に定着しつつあることを、ダーシーは見守ることを楽しんでいた。大晦日の晩に開かれる舞踏会の準備が進んでおり、ジョージアナは屋敷の隅々にわたって彼女の新しい姉に喜んで案内していた。彼女とエリザベスは一緒になって、準備される食事の一つ一つを監督していた。舞踏会の前日、ビングリーとジェーンがハートフォードシャーから到着し、ダーシーの従兄のフィッツウィリアムも既に集まっている家族と合流した。
    ダーシーが近隣の人々を歓待し、彼らにエリザベスを紹介した大晦日は大変喜ばしいものであった。その時が来ると、二人はダンスを始めるために共に舞踏室へ向かった。
    音楽が始まると、彼女は驚いて彼を振り返った。そして「この曲、去年、ネザーフィールドの舞踏会で踊った曲と同じではなくて?それに、わたしたちが一緒に踊ったのと同じダンスでは?」
    「その通り!」とダーシーが、彼女に微笑みながら言った。「曲にもダンスにも別に問題はないからね。我々が適切に理解し合うのに必要なものだったんだ」
    このようにして、ダービシャーの友人たちと、二人にとって一番大切な身内に囲まれて、フィッツウィリアム・ダーシー夫妻は、ペンバリーでの安らぎと優雅さに満ちた水入らずのパーティにおいて、二人の人生の幕を開けたのだった。

    ―完―
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    Mrダーシーは今日も憂鬱(39)
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      第三十九章


      辻馬車がガーディナー家の前で停まり、ロンドン滞在のためにやってきたMrベネットと彼の娘を降ろすと、ダーシーとエリザベスには彼女の叔父とその一家との幸せな再会となった。
      ジョージアナは同じ日にロンドンに来ることになっていた。Mrベネットとダーシーは、翌日に弁護士と会い、ジョージアナは昼食を共にするためガーディナー家に兄たちとともにやってくるという手はずを整えていた。
      彼の妹とエリザベスとの再会は、ダーシーが望んだとおりとなった。親友以上の絆となるのは明らかで、二人の若い淑女たちは間もなくMrsベネットがジェーンの為に与えた任務や、ネザーフィールドで必要とされる様々な調度品についてあれこれ話し始めた。
      Mrsガーディナーは、ハートフォードシャーへ送る見本を選ぶため、一番近い倉庫へ彼女の義兄と姪を案内することを引き受けた。Mrベネットとエリザベスはその後で、その日の残りはダーシーの屋敷へ行って過ごすことに同意した。

      *************


      Mrsベネットの要求を片づけると、ダーシーと妹はエリザベスと彼女の父親の到着を歓迎した。Mrベネットは図書室を案内するというジョージアナの申し出をすぐに受けた。
      「ペンバリーの蔵書に比べるとはるかに劣るんだが。ご興味をひくものが何かしら見つかるでしょう」と、Mrベネットとジョージアナが客間に向かうと、ダーシーは述べた。
      「最初に行きたいところは?」と彼はエリザベスの方を向きながら、尋ねた。
      「お屋敷を観て回る前に、お尋ねしたいことがあるの」と彼女は答えた。「もしよろしければ、ですけど。シャーロットのことなの。わたしたちがロージングスを訪ねるのは、少なくともしばらくの間は、難しいことになるでしょうし、ハンスフォードの牧師館にわたしが泊まるのはお嫌でしょう。わたしたちのどちらも、Mrコリンズとはお付き合いしないって分かってますけど、でもシャーロットは…今でも…わたしの大切なお友達なんです。彼女がハートフォードシャーの実家に帰る途中、時々、ここでわたしに会いに来るとしたら、反対なさる?今年の初め頃、彼女はレディ・キャサリンからの伝言をあなたに伝えたって、言ってたわ」
      「その通り。レディ・キャサリンがロンドンに出て来る予定を立てた理由を僕に警告してくれたんです。結果として、従兄に会いにエセックスに逃げ出すことができたんだから非常に感謝していますよ。いつでもここに泊まりに来るよう招待して構いませんとも。Mrコリンズがケントで引きとめられて、奥さんと一緒に来れないことがいつも確実で、予め分かっている限りはね」
      彼女は心から礼を言った。
      彼は振り向き、彼女に部屋を見せようとしたかのように見えたが、足を止め、やや慌てたように言った。「そういえば、ロングボーンで先週キティが僕を困らせようと言ったことがあるんだが、Mrコリンズに関することでね…その、僕の求婚が二番目だったとか」
      エリザベスは気遣わしげな様子をみせた。そして彼から目をそらして外の広場を窓越しに見つめてから、言った。
      「キティはそんなこと言っちゃいけなかったのよ。わたしに関する限りばかげたことだけど、Mrコリンズはネザーフィールドの舞踏会の後すぐ、わたしに結婚を申し込みました。よかれと思ってしたことなの、少なくともある意味においては。だってそうすれば、父の死後、ロングボーンを彼が受け継ぐ限嗣相続も、他の家族を不利な立場に追い込まなくて済みますもの」
      それから彼女はもっと明るい調子で付け加えた。
      「ですから、Mrコリンズのキャベツ畑の状況に関する定期的な報告に対して、何かしら感想を言わなかったとしたら、毎日お説教を聞かされることを大事なお友達のシャーロットが耐えているような目に、わたしが遭わずには済まされなかったかもしれないの。そんなことになったら、全くの苦悶を味わっていたに違いないわ」
      そして彼女は素早く笑みを浮かべて振り向くと、ダーシーを見つめたが、彼の表情を見ると真顔になった。
      「まぁ、一体どうなさったの?」
      彼女の返事を聞いてダーシーの感情は非常に強かったので、心を鎮めるのに四苦八苦してようやく答えることができた。それから彼は熱烈に、恐らくはその場にふさわしい適切さに賭ける様子で話した。
      「それはMrコリンズの考えで、あなたも…彼がそうする権利があると…いや、そんなことは考えたくもない!」
      エリザベスの最初に見せたこれに対する反応は、彼の言葉の真意を理解するうちに、ひどく真っ赤になったことだった。それからわずかなためらいを見せた後、彼女は前に歩み寄り彼の手を取った。

      *************


      数分たってから、ダーシーは口を開いた。
      「お父上はどちらだろう?ジョージアナは図書館に関しちゃ、雄弁な案内役に違いない。少なくとも半時間はいなくなっているんだから!」
      「気が付かなかったわ…」と彼女は言葉を切り、再び頬を染めて言った。「お二人のところへ行きましょうか?」
      「すぐにでも」とダーシーは言い、「でも最初に二階で見てもらいたいものがあるんです」そして、彼は広場を見渡せる二階にある居間へ彼女をいざなった。家具類は色あせてはいたものの、好ましい感じのものだった。
      「母のものだったんです。当時のままにしてあります」
      エリザベスは自分の周りを見渡した。「思い出がたくさんおありなんでしょうね」と彼女は、彼を注意深く見詰めながら言った。
      「そうです。でも良い思い出ばかりですよ。あなたに使って頂きたいのです。お望みなら、好みに合わせて家具を替えてください」
      「お母様のこと、とてもお好きだったのね」
      「ええ。母は」と彼は微笑んだ。「強烈な性格でしたよ。もっとも姉のレディ・キャサリンほど高圧的な人ではなかったけれど。母があなたと知り合っていたらよかったのに」
      「わたしもよ。お母様のお部屋を持ててとても嬉しいわ」
      | −“Darcy's Story”試訳 | 20:33 | comments(4) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
      Mrダーシーは今日も憂鬱(38)
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        第三十八章


        ジョージアナは兄の手紙に対する返事を即座に書き上げた。二人の間近に迫った結婚の知らせを受けて表した喜びはあまりに大きく、その嬉しさは便箋の四辺では埋め尽くせないのだった。
        ジョージアナからの手紙が届いた同じ日に、ロングボーンの一家は、ハンスフォードからルーカス・ロッジへの突然やって来た予期しない客人のことを聞き知った―コリンズ夫妻である。
        Mrsコリンズからの知らせによると、ダーシーの伯母は甥が寄こした手紙の内容に怒れることこの上なしだったが、だからと言ってダーシーは困りはしなかった。エリザベスはすぐにシャーロットから、彼女自身はこの縁談に大変満足していたのだが、当分の間は夫ともどもケントから逃げ出すのが賢明と確信したことを聞き及んだ。コリンズ夫妻がやって来た理由は、間もなくダーシーに届いた手紙により裏付けられたが、それは次の郵便でレディ・キャサリンから届いたものだった。手紙には、これ以上ないほどのエリザベスへの怒りと罵倒の言葉が書き連ねられており、ダーシーは返信を出さないことを決めた。
        友人が来てくれたことでエリザベスが心から喜んでいる姿をダーシーは見ることになった。だが、Mrコリンズがダーシーにへつらうように慇懃な態度ですり寄って、話しかけてくるのは試練であった。エリザベスの為を思って、彼は全力でこの試練に対して静かに耐えた。
        ダーシーはMrコリンズがSirウィリアムと同じくらい彼を疲弊させることに気付いた。Sirウィリアムは会うたびにいつも、国中で一番光り輝く宝石をさらってお行きになるのですなとお世辞を述べたり、St.ジェームズ宮殿で頻繁にお会いしたいものですと言ってきたりするのだった。メリトンに住んでいるエリザベスの叔母、Mrsフィリップスは彼の忍耐に対し更に重い税を課すようなものだった。フィリップス叔母は、友人ビングリーの愛想の良さに助けられて彼に話すように気安く話しかけるには、あまりに畏れ多い存在としてダーシーをみていたが、それでも喋るとなるといつも俗っぽくなってしまうのだった。
        エリザベスはそういった数々のきまり悪さから彼の楯となるため出来る限りのことはしたし、彼を他人の目に晒らさせないように、そして家族の中でも彼が難なく話せる人間と一緒にいさせようとした。だが、ダーシーはこのように不愉快な感情について彼女が気を遣い、それが婚約期間中に味わえたはずの喜びを彼女から奪っていることに気付いていた。彼らは共にペンバリーで二人で過ごせる時が来るのを待ち望んでいた。

        *************


        こんな具合に日々が過ぎ、結婚式をおよそ六週間後に控えた数日後のある朝、エリザベスが彼の所にやって来た。
        彼女はややためらいがちに口を開いた。
        「父がわたしに教えてくれました。結婚に際して、わたしに莫大な財産を下さるおつもりなんですってね」
        「当然の権利でしょう。いや、あなたが快適で安全に暮らせることを願っただけかな」と彼女の手を取って、彼は答えた。
        その時ある考えが彼に浮かんだ。彼はこれ以上毎日、彼女の親戚や客人と一緒にいたくなかった。数日、ハートフォードシャーから離れて過ごすことは、別段歓迎されざることでもないだろう。
        「エリザベス、ジョージアナに会ってから数週間が経つんだが、まだダービシャーに滞在しているんですよ。勿論、結婚式にやってくるけど、ある考えがあるんだ。弁護士に指示して、あなたへの財産贈与の書類を作成させなければならないが、お父上が仰っていたが、Mrフィリップスがあなたのためにお父上の代理をして下さるだろう。
        だが、僕がロンドンへ一人赴くよりむしろ、Mrベネットがロンドンにおられるガーディナー叔父の使用人を使うことができるはず。リディアとウィッカムの件では大いに役立ってくれた者だから。同意して下さったらだが、お父上に同行して、この件が落ち着く間、数日ロンドンに滞在してみてはどうですか?そうなれば、ジョージアナに手紙を書いて、妹はペンバリーからこちらに合流できる。ガーディナー家では喜んであなたを迎えて下さるでしょう?ロンドンにある屋敷をあなたに見せることができるし」
        彼女の返事の様子をみると、彼には疑いを差し挟む余地はなかった。
        「ええ、勿論よ!父はロングボーンと母が準備するあらゆることから逃げられるのを喜ぶにきまってますわ。もっとも、ロンドンにいる間、わたしたち両方にやるべき任務を与えるんでしょうけど」
        エリザベスが予期した通り、彼女の父はこの提案をありったけの積極性をかき集めて歓迎した。数日かけてのやり取りで、グレースチャーチ街でエリザベスと彼女の父を喜んでお待ちするという嬉しい確認の知らせが届いた。
        同じ頃ダーシーはダービシャーに言伝をし、ジョージアナは彼女とMrsアンズリーがその週のうちにロンドンに赴くことを請け負った。
        | −“Darcy's Story”試訳 | 22:21 | comments(2) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
        Mrダーシーは今日も憂鬱(37)
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          第三十七章


          翌日、ロングボーンでは、エリザベスとダーシーが客間の端にある窓際に座っており、彼女は彼が自分を恋するようになった理由を聞かせてくれるよう彼にせがんでいた。
          「どこから始まったのでしょう?」と彼女は言った。「ひとたび着手されたら、魅力的なほどに進めていかれるのは良く分かるのですけど、そもそものきっかけはどんなところから?」
          彼女がこういったからかうようなやり方で彼に話しかけるとき、ダーシーは適切な礼儀を保っているのが難しいことが既に分かっていた。しかし、この質問には真面目に答えるのがふさわしいのではないだろうか。
          「その基礎が置かれたのがどんな時間で、どの場所で、どんな様子だったか、何を話したかなどは決められません。あまりに昔のことなので。始まったと気付いた時には真ん中にいたのですよ」
          だが、彼女は彼を笑わせようと決めたようだった。
          「わたしがきれいだなんてことには、早々と反対されておいででしたものね。態度はどうかと言えば、あなたへのわたしの振る舞いは、少なくとも、いつも無礼と言ってもいいほどでしたし。どちらかと言えば、あなたとお話しするときは、いつも苦痛を与えたいと思っていましたもの。さぁ、真面目にお答えになって。わたしが生意気なので評価なさったの?」
          彼はこれには思わず屈してしまい、こう言いながら彼女と笑い合った。「あなたの心が生き生きとしていたからですよ」
          「いっそ生意気だからと言って下さっても構わないわ。ほとんど同じことですもの」
          エリザベスはその後もっと真面目な話し方で、話を続けた。
          「実のところ、礼儀正しい対応をされたり、敬意を払われたり、お節介を受けたりするのに飽き飽きなさったのよ。いつもあなたからの称賛を受けたいためだけに話したり、注意を向けたり、考えたりするご婦人方にうんざりされたのね。わたしがそんな方々とは全く違うので、あなたの関心がかき立てられ、興味をお持ちになったんだわ。あなたが本当に気立ての良い方ではなかったら、わたしを憎まれたでしょうね。でもご自身を偽るのに苦心されたにもかかわらず、あなたの感情はいつも気高く、公正でした。心の中では、あなたに熱心に言い寄ってくる方々を完全に軽蔑なさっていたんですもの」
          彼は彼女に同意してその挑発に乗ろうとはしなかった。
          「ほら、もう理由をお聞かせ下さる手間を省いて差し上げましたわ。本当に、いろんな点から考えてみると、完全に道理にかなっているって思うようになりました。確かに、あなたはわたしの現実に良いところなんてご存知ないはずよ。でも誰だって恋している時はそんなこと考えもしませんものね」
          「ジェーンがネザーフィールドで病気だった時、彼女への愛情あふれる行いに良い点がなかったと?」
          「大好きなジェーン!ジェーンに対して、あれ以上のことをせずにいられる人なんているのかしら!ええ、いいわ。なんとしても、あれを美徳として下さいな。わたしの長所はあなたの庇護のもとにあって、あなたはそれをできるだけ大げさに吹聴して下さる。それなら、お返しに、頻繁にあなたをからかったり、口論する機会を見つけることがわたしの仕事になりますわ」
          彼女は魅惑的に微笑むと、突然それよりもずっと深刻な面持ちとなって言った。「率直にお尋ねすることから始めますけれど、ようやく本題に入るのが、何故あれほど気が進まなかったのですか?最初にロングボーンにいらした時も、その後で食事をされた時も、どうしてあんなにわたしを避けておいででしたの?特にいらした時、まるでわたしのことなんか気にもかけてないように見えたのはどうして?」
          「あなたが重々しい顔をして黙っておられたので、気がくじけたんですよ」
          「決まりが悪かったんですもの」
          「僕もそうでした」
          「お食事にいらした時は、もっと話しかけて下さることもお出来になったはずですわ」
          「僕ほど想っていない男なら、そうしたでしょう」
          「あなたには正当な答えがあって、わたしにはそれを認めるだけの分別があるなんて、不運なこと!でもあなたをお一人のままにしていたら、どれほど長い間あのままの状態でいらしたことでしょう。もしわたしがお尋ねしなかったら、いつお話しして下さったことかしら!あなたがリディアにして下さったご親切への感謝をしなくてはというわたしの決意は、確かに大きな効果があったというわけですわね。大きすぎたのではないかしら。もしわたしたちの安らかな気持ちが約束を違えたことから生じているのであれば、道徳的にどうでしょうね?だって、あの件には触れるべきではなかったんですもの。決して口にしてはいけなかったことですのに」
          「そのことで思い悩む必要はありませんよ」とダーシーは言った。「道徳的には全く問題ありません。レディ・キャサリンが僕たちを引き裂こうとした不当な努力のおかげで、僕の疑いはすっかり取り除かれたんですから。僕の現在の幸福は、感謝の意を表したいというあなたの強い願いによるものではないんです。あなたが口を開くのを待つ気はありませんでした。伯母がもたらした情報が僕に希望を与えてくれたので、全てを知ろうとすぐに決心したんです」
          「レディ・キャサリンがどれほど役立って下さったか計り知れませんわね。誰かの役に立つことをあれほど好まれる方ですもの、きっとお喜びになりますわ。でも教えて下さいな、ネザーフィールドへは何のためにおいでになったの?ただロングボーンまで馬にお乗りになって、決まり悪い思いをなさるため?それとももっと他の重大な結果をお望みでしたの?」
          「僕の本当の目的はあなたにお会いして、できれば、あなたが僕を愛して下さる望みがあるかどうかを判断することでした。僕が明言していた目的、もしくは自らに認めていた目的は、あなたの姉上がまだビングリーを想っていらっしゃるかどうかを見極め、もしそうなら、ぼくがしでかしたことを彼に告白するということでした」
          「レディ・キャサリンのお身の上にどんなことが降りかかるのか、お知らせる勇気はありまして?」
          「勇気よりも時間の方が足りないらしいですよ、エリザベス。でも、しなければならないことですからね、紙を一枚下さるのなら、すぐに取りかかるとしましょう」
          「わたしも書かなくてはならない手紙がないのであれば、以前お若いご令嬢がなさったように、あなたの筆跡が均一なことに称賛の声を上げるところですわ。でもわたしにもずいぶん疎かにしていたに違いない叔母が一人おりますの」
          十五分以上にわたり、二人が手紙を書き続けている間、部屋には打ち解けた沈黙が流れていた。
          ダーシーは彼女が手紙を完成させるよりずっと前に書き終えており、静かに座ったまま、安心して彼女を見つめる喜びに浸っていた。ゆっくりと、彼が注目していることに気付くと、彼女は少し微笑んで振り向いた。
          「この手紙に封をする前に」とエリザベスは言った。「叔母と叔父にペンバリーに私たちと一緒に滞在する招待を書き加えてもいいかしら−叔母は特に喜ぶと思いますわ」
          「是非とも」と彼は言った。「十一月が終わったらすぐに結婚することになっているのだから。クリスマスのお祝いに、お子さんたちを連れて、ご一緒できるよう頼んでみては?」
          彼女の顔に浮かんだとびきりの笑顔を見れば、返事は必要なかった。
          「ただし」とダーシーはしかつめらしく聞こえるように努めた口調で付け加えた。「条件が一つだけ!」
          エリザベスは少し用心深くなって彼を見た。
          「あら、どんな条件ですの?」
          「僕と踊ることを初めて潔しとしなかったある若い令嬢がいたことを覚えているんですよ。別の時には、二度も踊りませんかという僕の誘いを断ったこともあったし。そのうちの一回は、とても好きだと彼女の姉が教えてくれたリールダンスだったのに。その後、ようやくネザーフィールドで僕と踊ってくれた時は、Mrウィッカムとかいう人物の権利と人柄の擁護や、僕自身の性格をはっきりさせることを主張していたことも覚えている」
          これには彼女も幾分まごついたようで、むしろ不安そうでさえあった。
          その表情を見ると、ダーシーはさすがにそれ以上の厳めしさを装うのは無理だった。
          「大晦日にペンバリーで開かれる近隣の人々のための舞踏会に、僕と一緒にいてくれるかどうかを尋ねるつもりだというだけですよ。その日、あちこちからやってくる友人をもてなすため、両親がやっていた楽しい習わしなんです−母が亡くなってやめてしまったのですが」
          彼はそう言うとしばらく黙ってしまったが、心を落ち着かせると、からかうような笑顔を彼女に向けた。
          「そういうわけで」彼は続けた。「僕と最初に踊ることで舞踏会が始まるということからあなたは逃れられないんですよ。ダービシャーの隣人たちにあなたを紹介する機会もあることだし。ビングリーとジェーンはハートフォードシャーでクリスマスを過ごして、ロングボーンのご家族を訪問することになっているから、そのうちこちらに旅行して来れるでしょう。それに恐らくフィッツウィリアムもね?」
          かくして一件落着し、手配に取り掛かることとなった。
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          Mrダーシーは今日も憂鬱(36)
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            第三十六章


            ビングリーにお休みを言ってから、ダーシーはネザーフィールドの自室へ行ったが、眠る気にはなれずにいた。
            ここ二日の間に起こった事のせいで、彼には深く考える時間がほとんどなかった。
            他人の賛同を頼る性質ではなかったけれども、この時ばかりは、彼の眼前に今広がっている幸せな未来における喜びを打ち明けることのできる人が欲しかった。
            ビングリーは良き友だったが、ダーシーは彼に自分の心の奥底にある感情を見せることは今までなかったし、従兄のフィッツウィリアムは他の所にいた。その時、彼は最後に共に過ごした時の妹との会話を思い出した。
            彼女が兄に尋ねた時、彼女は彼が思っていた以上に優れた洞察を見せたのだった。
             「お兄さまは南の方へお戻りになりたいのではなくて?Missエリザベス・ベネットにお会いになるためではないかしら?あの方はひょっとしたら、お兄様にとって…今まで以上に大切な方におなりになるのでは?」
            彼は正直に彼女に応えようと決意する前に、ためらっていたのだった。
             「実際のところ、それは既に事実なんだよ。だが彼女の意見に関してはどうだろう…分からないんだ、ジョージアナ。そうなればいいと強く願ってはいるんだが。でも一つの可能性にすぎない。僕に南へ行ってほしいと思うのかい?」
            彼は彼女が最初、返事をしなかったので驚いたことを思い出した。だがその代わり、部屋を横切り彼の手を取って、こう言ったのだ。
             「それ以上の良いことなんて何もないのよ。でもご心配なさらないで。何が起こっても、秘密は守ります。」
            恐らくジョージアナはこれからは彼が守ってやる必要があった妹以上の存在になることだろう。彼自身とエリザベスの両方にとって近しい存在に。ダーシーは机に椅子を引き寄せ、紙とペンを取ると手紙を書き始めた。
            手紙を書き終えると、部屋の時計が一時を鳴らした。
             …そういう次第で、ジョージアナ、我々二人の幸福を祈ってほしい。
             ケントの伯母上から手紙を受け取るだろうが、レディ・キャサリンがこれと異なる意見をお持ちでも驚かないないように。伯母上にも手紙を書くことになるだろう。
             明日郵便でこの手紙をペンバリーに送るが、もっと伝える知らせができ次第、また手紙を書くつもりだ。
             愛を込めて兄より、
             フィッツウィリアム・ダーシー

            *************


            翌日、Mrベネットはダーシーがロングボーンにビングリーと共に到着する前に、残りの家族に対して公表していたので、彼とエリザベスは祝福の嵐の中心にいた。
            Mrsベネットは彼女の未来の義理の息子にあまりにも恐れを抱いているようだったので、彼に話しかけるという危険を冒しはしないでいたが、彼にいくらか配慮を示したり、彼の意見に対して彼女の敬意を明確にしたりできる場合は別であった。彼女の会話は「Mrダーシー、お好きなお料理は何かお教え下さいましな。今晩、それをお出しできますわ」というような質問に限定されたというように。
            彼らが到着して間もなく、ベネット家の主人が彼の書斎へ彼を連れ出した。
            「あなたが私の末娘のリディアと、あのウィッカム君を結婚させるにあたって果たして下された大きな役割を、リジーから聞いて理解しました。あなたのお骨折りにこの上なく感謝しております。できるだけ早く、返済させて下さらねば」
            ダーシーはこの申し出がなされた場合、どう応じるべきかいくらか検討していた。彼は一晩掛けて、これこそ、彼のエリザベスへの真実偽らざる愛情をMrベネットに納得させる最上の機会を彼に与えるだろうと考えをまとめたのだった。愛情の証明については前日、彼女の父親にはいくらか疑わしいと思われていたようだったからである。
            「ご存知のことと確信しておりますが、私には十分すぎるほどの資産がありますので、その出費に関してご懸念の必要はほとんどありません。しかし、例え異なった状況であったとしても、エリザベスの心の平安のためならば、今回と同じように全てしたことでしょう。私がしなければならなかった全てのこと、つまり結婚にこぎつけた件ですが、私の考えの中には彼女がいつもいたのです。そして、私の傍に彼女がいなければ、未来永劫、私に幸せはあり得ないのです。ですから、返済のお話はもうこれ以上ないものとして下さい。我々の結婚にあなたがご承諾下さることが、私にとって有り余るほどの報酬なのです」
            Mrベネットはダーシーには言葉に詰まるような人に見えたことはなかったが、今度ばかりはほとんど言葉を失いかけているように思えた。
            彼は正常を取り戻すと、極めて簡単にこう言った。「ジェーンは良い娘ですが、リジーは娘たちの中で私のお気に入りの子です。あの子がいなくては、ここでは慰めなどほとんど得られないでしょう。殊にMrsベネットがどこか他の場所で忙しくしている時ですが、求められる以上に、少々頻繁なほど私があの子を訪ねにペンバリーへ伺っても、反対なさらないで頂きたいのだが」
            ダーシーは答えた。「喜んでその件には合意させて頂きます」
            その朝遅く、ビングリーは翌日ロングボーンへ彼の馬車を走らせ、Missベネットと彼女の妹がネザーフィールドで午餐を取ることに同意した。メアリー・ベネットも彼女たちに同行するように手配された。ビングリーは彼女にピアノフォルテの演奏を提案したのだった。彼女がそれを最後に見たのは、昨年の十一月のネザーフィールドの舞踏会の夜のことだった。

            *************


            エリザベスと彼女の妹達が翌朝、ネザーフィールドに着いた時、この占領は他の一行からメアリーをすぐに引き離し、ジェーンとビングリーは結婚式より前に彼女の好みに合わせた部屋の装飾について家政婦と話し合うために去って行った。ダーシーとエリザベスは客間に向かい、そこで彼は彼女が結婚について父親に話した時、Mrベネットの反応がどうだったかを尋ねる最初の機会を得た。
            エリザベスはダーシーの胸を高鳴らせるのが確実な溌剌とした笑顔を彼に見せ、こう言った。
            「あなたが間違った高慢さなど持ち合わせてなどいないって言ったのよ。だってあなたは申し分なく感じの好い方ですもの。あなたが本当にわたしが選んだ方だってことを請け合って、あなたがお受けになっていたわたしの評価は段々と変化していったことを説明したんです。わたしへのあなたの愛情は一日の成果ではなくて、何カ月もの間不安にさせる試練に耐えた結果、確信したものだと言いました」
            エリザベスは、更にもっといたずらっぽい笑顔を浮かべて、付け加えた。「そして、勿論、あなたの長所を全て並べ挙げて、最後には父を納得させたんです、わたしたちは世界で一番幸せなカップルだって!」
            この独演会が終演を迎える頃には、手近に誰一人お目付役のいない未婚の令嬢と一緒にいて、ダーシーが彼の状況にふさわしい尺度の落ち着きを保つというのはいささか困難であった。
            「それであなたは」と彼は気を静め、彼女のからかうような調子に同調しようと努めながら言った。「僕を少しは愛しているとお父上に言ってくれたのだろうか?」
            「ええ、言いましたとも」彼女は答えると、彼の方にまっすぐ顔を向けながら、今度はずっと真面目な様子で言った。「それに、少しどころではないって言いますわ。そのこと、そろそろお分かりになって下さるといいんですけど」
            | −“Darcy's Story”試訳 | 20:20 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
            Mrダーシーは今日も憂鬱(35)
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              第三十五章


              晩餐の後のその夕べ、主人が自室へ行くため座を離れると、ダーシーは彼の後を追った。
              彼を見ると、Mrベネットは言った。「どうかされましたかな?書物の一冊でも喜んでお貸しいたしますよ。他の娯楽に興味が失せた時など、読書は人気がありましょうから」
              「ありがとうございます。その理由での本は必要としておりません。ですが、お話したいことがありまして。少しお時間を頂けないでしょうか」
              Mrベネットは驚いたようだったが、何も言わなかった。書斎へ案内すると、客人に椅子を勧めた。
              しかしダーシーは暖炉の方へ歩いてから、振り向いてみた。すると一目でその部屋が居心地の良い家具に囲まれ、書物が並んでいるのを見て取った。屋敷の主人が自分の時間の多くをここで過ごしていることが一目瞭然であった。
              彼はすぐさま、口火を切った。
              「私にとってこの上なく重要な件で、お願いしたいことがあるのです。ご同意を頂けましたらですが、私の結婚の申し込みをお嬢様が、Missエリザベスが光栄にもお受け下さると仰って下さいました」
              ベネット家の主はこの申し出の趣旨を理解するのにしばらくかかったようだった。彼の表情はゆっくり驚きに変わり、それから不安の様相へと変わっていった。ようやく、Mrベネットは言った。「リジーに結婚を申し込まれた…しかも娘は応じたと?」彼の言い方はまるで打ち消しの返事を期待しているかのようだった。
              ダーシーはあっさりと答えた。
              「はい。お嬢様は私にその栄誉を下さいました」
              「申し訳ないが、Mrダーシー」Mrベネットが言った。「何と言ったらよいのやら…娘が…あなたとリジーが親しかったとは…そのような付き合いをするほどに?」
              ダーシーは一瞬待った。それから、主人が話を続ける動きを見せなかったので、口を開いた。
              「今年の初めの頃、ケントやダービシャーで会っていたことを少しはご存知だろうと、お嬢様は私にお話し下さいました。そのことについてはお嬢様とお話されたいとお思いのことでしょう」
              Mrベネットは黙ったままだった。
              「今自分のために言うべきは、お嬢様が私の妻となって下さることこそが私のかけがえのない望みだということだけです」
              ダーシーは一瞬躊躇したが、Mrベネットに未だ返答する気配が見られなかったので、付け加えた。「確信を持って申し上げられますが、結婚が成立した場合、お嬢様にはかなりの額の財産を贈与させて頂く所存でおります。何不自由なく暮らせることでしょう」
              この最後の所見を聞くと、Mrベネットはようやく話す気になった。もっともダーシーが期待していたセリフではなかったが。
              「娘にして下さるあなたのお力を疑ってなどおらぬが…」と彼は言った。
              だが、彼は困惑と言ってもいい声の調子で言った。「あなたと娘の間でお互いに通い合う気持ちがあるとは見当もつかないのですよ。正直に言いますと、あなたにご結婚の意思があるとは全く気付かなかった」
              「お許し下さい」とダーシーは言った。「Missエリザベスと私が、私の友人のビングリーとご長女のMissベネットよりも、感情と行動において率直さに欠け、人目を憚っていたということであれば」
              「そう、そうなのですよ」とMrベネットは、ほとんど不機嫌そうに言うと、それから沈黙に陥った。
              ダーシーにはこの反応にどう踏み込んだらいいのか確信が持てなかった。殊に、エリザベスの口論における巧みさが彼女の父親から受け継がれていることを過去に見抜いてからはそうだった。
              一呼吸置いたのち、彼は遠慮がちに言った。「どうか、ご承諾を頂けないでしょうか?」
              Mrベネットは一瞬彼を見据え、それからゆっくりと言った。「それは無論のこと。だが、もしよければ、その前にリジーと話したいのだが…その知らせが他の家族に伝わる前に」
              彼が誰のことを考えているのか推測するのはダーシーにとって難しいことではなかった。
              「勿論です。エリザベスが…お嬢様があなたのご意見を非常に尊重しておられることは存じておりますから」そう言って、ダーシーは書斎を辞去し、客間へと戻った。
              彼の不在は、エリザベスを除いては、気付かれたようには見えなかった。他の者たちのほとんどが忙しくカード遊びに参加していたからだ。彼は他の者たちが没頭しているのを確かめると、エリザベスに微笑んだ。そして、気付かれることなくそうしていたしばらく後で、彼は彼女がキティと一緒に座っているテーブルの方へ近づいてきた。
              彼女の手仕事に感嘆しているふりをしながら、ダーシーはささやくように言った。「お父上のところへ。書斎でお待ちです」

              *************


              彼女が席を外している間の彼の不安は耐え難いものであり、彼には彼女が戻って来るのが大幅に遅れていたような気がしていた。
              ここ数カ月来の多事難題の後では、彼女の父が異議を申し立てることなくこの縁組に同意するという楽観視など彼には到底出来かねた。彼のお気に入りの娘への反対がまだあるのかもしれないし、それがエリザベスにかなりの影響を及ぼすこともあり得るのだ。
              とうとう、その晩もお開きになりつつあった。彼とビングリーがネザーフィールドへ戻らねばならない時が近くなってきた時、彼女が部屋に戻ってきて、再び席に着いた。二人が去る時が来ると、Mrsベネットや家族の他の者たちはビングリーとジェーンの相手をするのに忙しくなったので、ダーシーはエリザベスに話しかける機会を得た。
              「お父上は…」と切り出したが、彼が思っていたよりも不安げに聞こえており、それ以上続けられないでいた。
              エリザベスは声にならない質問に答えた。「わたしが請け負った保証を信用しようとしていますわ」と明快に言うと、突然とても幸せそうに微笑んでみせたので、ダーシーは彼の近くに立っているその部屋の他の人々の存在を危うく忘れるところだった。
              この時ばかりは、Mrsベネットの介入に彼は感謝した。
              「Mrビングリーが馬車の中でお待ちですわ、Mrダーシー」ときつく彼女が言うと、ダーシーはいとまを告げた。
              | −“Darcy's Story”試訳 | 23:17 | comments(6) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
              Mrダーシーは今日も憂鬱(34)
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                第三十四章


                ネザーフィールドへの帰路、ダーシーは彼の友にその日の出来事を打ち明けた。
                ビングリーは文字通り唖然となった。
                「ジェーンと僕はそのことを話してたんだよ」と彼は言い始めた。「だけど、そんなことはあり得ないって結論に達したんだ」
                彼は続けて言った。「ダービシャーのラムトンとペンバリーでエリザベスに会った時、僕は君がそういう方向にいくらか傾いていたのかも、と思ったことはあったと言わざるを得ないよ、姉たちは全力でそれを非難していたけどね。だが、その時から、君が少しは結婚する意思があったことは僕には確認できなかった」
                ビングリーは一息つくと、突然新しい考えが浮かんだかのように続けた。
                「レディ・キャサリンがロングボーンにエリザベスに会いにいらしたそうじゃないか。ジェーンがその訪問について教えてくれたよ。君のためだったのかな?」
                「まさか!そうじゃない」とダーシーは思ったよりも激しい調子で言った。
                彼はすぐに、少なくとも今はまだ伯母がこの結婚について強く反対していたことを広めるのは、たとえビングリーほどの親しい友人であっても、彼女に手紙を書いてその返事を受け取るまでは、賢いことではないと顧みた。結局、どんなに小さく、ありそうにないとしても、レディ・キャサリンがこの縁組について心変わりをするかもしれない可能性だってあるのだ。
                その代わり、彼はビングリーに「幸福を祈ってくれるかい?」と言った。
                彼の友は熱心に答えた「心から喜んで。ジェーンと僕以上に喜ぶ者は他に考え付かないよ。Mrベネットには明日話すつもりかい?」
                「恐らく、そうなるだろうな」とダーシーは答えた。「エリザベスともう少し込み入った話をする機会ができた後で。明日、また散歩に出かけるよう提案してくれないか?正直に言うと、誰にも聞かれずにロングボーンで彼女と話せる見込みが少しありそうなんだ」
                「勿論だよ!」と彼の友が言った。「その運動が君のためになるのは明らかだからね!」

                *************


                翌日、ダーシーは友人の後について、ロングボーンの客間へ入って行った。
                二人が入るとすぐ、ビングリーはエリザベスを意味ありげに見つめ、熱っぽく彼女と握手したので、彼が朗報を知っているのを疑う余地はなかった。それからすぐに彼は大きな声で言った。「Mrsベネット、リジーが今日もまた迷子になりそうな小道はこの辺りにありませんか?」
                ダーシーは少し驚いたように彼を見つめているエリザベスを見たが、彼女が何も言わないうちに彼女の母親が割って入った。
                「Mrダーシーとリジーとキティにお勧めするのは」とMrsベネットが言った。「今朝はオーカム山へ歩いて行かれることですわ。良い具合に長い散歩になりますし、Mrダーシーはあの眺めをご覧になったことがないのでは」
                「他の者にとっても非常に素晴らしいものでしょうね」とMrビングリーが返事をした。「だけど、キティには大変なんじゃないかな?そうじゃないかい、キティ?」
                キティは家にいた方がいいと認めた。
                ダーシーはMrsベネットに確かに山からの眺めはどうしても見ておきたいものだ、との意見を表した。エリザベスは何も言わなかったが、肩掛けを取りに行ってから、外で彼に合流した。屋敷からは声が届かないところまで二人が歩いてから、ダーシーは話を切り出した。
                「誰かが何らかの形で知ることになる前に、今晩にでも承諾を頂くためにお父上と話したいのですが。どんな反応を示されるか、察しがつきますか?」
                エリザベスは答えた。「あなたの申し込みを聞いたら、たいそう驚くと思いますわ。ケントやペンバリーでわたしたちの間に何があったのか、何も知らないんですもの」
                彼女は顔を赤らめながら続けて言った。「あなたに対する父の意見は、他の人たちの見方に影響されていて、最初にハートフォードシャーにいらしたときに出来上がったものなんです」
                「つまり、ロージングスでのあなた自身の見方に似ている、ということですね?」
                彼女はそのようなことを覚えていますと認めた。
                「それに、ほんの数日前、レディ・キャサリンがいらしたすぐ後ですけど、父はMrコリンズから手紙を受け取ったんです。それには姉の結婚が近々執り行われる知らせがケントにも届いていると書いてあって。そこから、わたしたちの縁組についての考えが導かれたに違いないですわ。サー・ウィリアムとレディ・ルーカスからシャーロットに伝わったんだと思いますわ。それで、あなたの伯母さまがこの結婚に反対していることを父に警告してきたんです。父はそんな可能性が示唆されたことにひどく驚いて、書斎にわたしを呼びました」
                「で、あなたは何と仰ったんですか?」ダーシーはかすかに笑みを浮かべながら言った。
                「嘘にならない範囲をできる限り少しだけ」
                ダーシーは気遣わしげに見えた。彼はエリザベスが彼女の父の秘蔵っ子であることを知っていたのだ。
                「お父上は僕にあなたとの結婚に同意することを拒絶するというわけではないのですね」
                「まさか、そんなこと信じられませんわ。でも、わたしがあなたへの愛情を持っていたとは勘づきもしなかったと言うかもしれないわ」
                「では、お母上に対してはどうされますか?」とダーシーは尋ねた。彼は、Mrsベネットがほんの二週間前に末娘の結婚の知らせを勝ち誇ったように彼に語って聞かせたことをよく覚えていた。
                エリザベスはダーシーが彼女の父に了解を得たことがはっきり分かり次第、自分がMrsベネットに話すと彼に告げた。妹とウィッカムの結婚の話が出たのでそのことに関して、もし何かあれば、何を明かすべきか、彼女は彼に引き続き尋ねた。
                「以前に申し上げたように、あの不幸な事件であなたにどれほど借りがあるのか、両親には少しも見当が付いていません。あれはガーディナー叔父がしてくれたことだと信じています。両親のどちらかにでもわたしが知らせることはお望みじゃないのかしら」
                「もし必要だとお考えでしたら、ただお父上にだけはお話し下さい。そうすることで、返済について叔父上を煩わせることはなさらないでしょうから」
                エリザベスはそれから、父が同意したのがはっきりした時点で、Mrsベネットに知らせを伝える手はずを整えた。彼女は娘たちのうちの誰かが将来性のある結婚をしてくれれば幸せになれるものと常に信じているとだけ言っていた。
                それで二人はウィッカムとリディアのことを思い出したが、将来についてのもっと楽しい話をすべく、素早く話題を切り変えた。
                | −“Darcy's Story”試訳 | 22:09 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
                Mrダーシーは今日も憂鬱(33-4)
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                  *************


                  のんびりと数マイル歩いた後、もっともそうだと気付くには話に忙しすぎたのだが、ロングボーンに戻る時刻だということが分かった。
                  「Mr.ビングリーとジェーンはどうなったのかしら!」と彼女が声を上げると、話題は二人の話になった。
                  ダーシーは二人の婚約を喜んでおり、彼の友が既にそのことについて伝えていたことを言った。
                  「驚きになったかどうか、お聞きしたいのですけど」とエリザベスが言った。
                  「全く。出かけるとき、間もなくそうなるだろうと思っていました」
                  「つまり、許可をお与えになったということですのね。そうだろうと思ってましたわ」
                  ダーシーは大体そんなところです、と認め、ジェーン・ベネットが冬じゅう、ロンドンのガーディナー家に滞在していた折、ビングリーと彼女を引き離した際の彼の役割をビングリーが許していたことを彼女に告げた。
                  「彼の驚きは相当なものでした。これっぽっちも疑いもしなかったのですから。さらに、僕がしたことに関して、あなたの姉上が彼に無関心であったというのは誤った判断だったと思うと彼に言いました。姉上への彼の愛情が失われていないことは、すぐに分かったので、きっと二人が幸福になるだろうと思いました」
                  「ご自身が観察した結果から仰いましたの?」と彼女が言った。「姉があの方を愛しているとあの方に話された時は。それともこの春に、わたしからお聞きになったことだけで?」
                  「僕の観察からです」とダーシーが答えた。「このところ二回、お宅へ訪問した間、僕は姉上を注意深く観察していました。それで姉上の愛情を確信しました」
                  「ではあなたの保証を得て、すぐにあの方も確信に繋がったのでしょうね」
                  「そうです。ビングリーは本当に気取らない穏やかな男です。自信の無さ故に、このような不安な状況では、自分の判断に任せることを良しとしなかったのですが、僕を信頼するあまり、あらゆることがたやすく動いてしまったのです。どうしても一つ告白をしなくてはいけなくなり、おかげでしばらくの間、当然といえば当然ですが、彼の怒りを買いました。この冬三か月というもの、あなたの姉上がロンドンにいたことを、僕が知りながらも、彼にその事実を伏せていたことを隠すわけにはいきませんでしたからね。彼は怒りましたが、その怒りが続いたのも姉上の愛情についての疑いが消えるまででした。今では心から僕を許してくれています」
                  ダーシーはエリザベスがそう聞いて少し微笑んでいるのを見たが、ビングリーとジェーンの幸福に比べれば、自分たちの幸福が遥かに上回るのは勿論のことだったので、ダーシーは屋敷へたどり着くまで会話を続けた。
                  玄関で二人は別れた。
                  「まぁ、リジー、どこまで歩いて行ってたの?」ダーシーよりほんの少し先立って、彼女が部屋へ入っていくと、姉が言った。夕食の席で、空いている反対側の席に二人が着いた時は、残りの者から同じ質問を受けた。エリザベスは歩きまわっていら、どこだか分からないところまで行ってしまったの、と答えた。だが、話しながら彼女の顔が赤く染まったとしても、そのことからも他のことからも疑いの声は起こらなかった。
                  食事の後、その晩は静かすぎるほど静かに過ぎていった。ダーシーは友人とベネット家の長女が共に談笑しているのを観察していた。エリザベスは黙っており、彼女の方を誰も見ていないときに彼だけに微笑みを見せた。だが、ダーシーはそれだけでこの上なく満足だった。
                  | −“Darcy's Story”試訳 | 23:11 | comments(4) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
                  Mrダーシーは今日も憂鬱(33-3)
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                    二人が少し歩みを進めてから、ダーシーはあの晩の後、彼が書いた手紙のことに触れた。
                    「あれで」と彼は言った。「あれですぐに僕のことを見直して下さったのですか?お読みになったとき、内容をいくらかは信じられましたか?」
                    彼女の答えはそれを裏付けた。初めはある個所において彼女を怒らせたものの、以前にあった彼女の彼への偏見が取り除かれてから随分と経っていた。
                    「僕には分かっていました」とダーシーが言った。「あの手紙があなたに苦痛を与えるに違いないということが。だが、そうしなくてはならなかった。あなたがあの手紙を破り捨てて下さればと思っていました。あなたがもう一度お読みになるとしたら僕にとって怖れをもたらすような個所が、特に一箇所ありました。僕を憎んでも当然と思われる表現をいくつか思い出せますよ」
                    「わたしの関心を保つのに必要とお考えなのでしたら、あの手紙は確かに火に投じましょう」と彼女は答えた。「でも、わたしの意見が全く変わらないわけではないと思う理由がどちらにもあったとしても、そんなことを仄めかすほどそう簡単には変わらないと思いますわ」
                    彼はしばらく考えてから言った。「あの手紙を書いたとき、僕は完全に落ち着いて冷静だと思っていました。しかし、恐ろしいほどの辛辣さで書いていたと今では確信しています」
                    エリザベスは手紙の書き手に関して、そこまで彼に手厳しくさせようとはしなかった。
                    「あの手紙は、おそらく初めの方は辛辣だったかもしれませんけど」と彼女は返した。「おしまいはそうではありませんでしたわ。お別れの御挨拶は慈愛そのものでした」
                    それから彼女は断固とした様子で続けて言った。「ですが、あの手紙についてはこれ以上思い巡らすのはやめにしましょう。あれを書いた方のお気持ちと、受け取った者の感情が今ではあの時とは大きく異なっているのですもの。手紙にまつわる不愉快な事柄はすべて、忘れるべきですわ。過ぎたことは、楽しかった思い出としてのみ考える、というわたしの哲学を少し学んで頂かなくては」
                    「そういった哲学をお持ちだとは信じられませんよ」とダーシーは言った。
                    「僕たちの回想を非難されるいわれが全くないことは確かです。回想から満足を得るのは哲学故ではなく、もっと良いことに、知らなかったからなのですよ。ただ僕に関して言えば、そうではありません。痛ましい記憶が押し寄せてくるのです。それは追い払うことができない、いや、追い払ってはいけないものなのです。僕は生涯を主義としてはそうではありませんでしたが、実際は自己中心的に過ごしてきました。子どもの頃、何が正しいことかは教えられましたが、自分の短気を正すことは教えられなかった。高邁な理念を教えられましたが、尊大な自負心を抱えたままでその道を追求するがままでした。
                    不幸にも一人息子で、何年も他に弟妹もおらず、両親に甘やかされていました。両親は正しい人たちで、特に父は慈悲深く、親しみやすい人でした。でも僕が己中心的で、高圧的で、自分の一族以外に関しては誰にも関心がなく、世間のあらゆる人々を軽蔑し、少なくとも僕自身と比較して彼らの判断や価値を軽蔑することを望んでいたことを、許し、助長し、教えた人でもあったと言ってもいいほどです。
                    そういう人間が、八歳から二十八までの僕であり、あなたがいなければまだそうあり続けていたかもしれないのです」と彼は言いながら彼女の方を向いた。「この世で最も愛しく素晴らしいエリザベス!何もかもがあなたのおかげだ!あなたが僕に与えた教訓は、初めのうちは全く辛いものでしたが、この上なく有益なものでした。あなたによって、僕は正しく謙虚になりました。僕の申し込みが受け入れられるものと疑いもせず、僕はあなたのもとへやってきた。だが、あなたは教えてくれました。喜ばせる価値のある女性を喜ばすのに、僕にどれほど資格が足りないかを」
                    「では、わたしが喜んでお受けすると確信されていらしたのね?」と彼女は驚いて彼に尋ねた。
                    「もちろんです。僕の虚栄心をどう思われます?僕はあなたが僕の申し込みを望んで、期待しているものと思っていたのですよ」
                    「わたしの態度は間違っていたに違いありませんけれど、故意にしたのではないことは確信をもって言えますわ。あなたを惑わすつもりなんてありませんでした。でもわたしの気質はしょっちゅう間違った方向を目指してしまうんです。あの晩以後、わたしのことをさぞかし憎まれたことでしょうね?」
                    ダーシーは小道に沿って歩みを止めると、彼女の顔の方へ向き、強い口調で言った。
                    「あなたを憎むとは!最初のうち腹を立てたでしょうが、怒りはすぐに正当な方向へ向き始めましたよ」
                    エリザベスは、彼の自責の念を鎮め、ケントで二人の間に起こったことから彼の思いを断ち切るかのように返事をした。「ペンバリーでお会いしたとき、わたしをどうお思いになったかお聞きするのも恐ろしいくらいですわ。なぜ来たのかとお咎めになったことでしょう?」
                    「いいえ、全く」とダーシーは答えた。「驚いただけです」
                    「その驚きは、あなたがお気づきになった時のわたしの驚きほど大きくはないでしょう。あれほどまでの丁重な扱いを受ける資格はないと良心が咎めましたもの。打ち明けますと、身に余るほどの饗応をして頂けるとは思ってもみませんでした」
                    「あの時の僕の目的は」とダーシーが答えた。「あらゆる点でできるだけ礼儀正しくして、僕が過去の恨みを晴らすほどけちな男ではないことを、あなたに見て頂くことでした。あなたからのお叱りに応えていることをお見せすることで、あなたから許しや良い評価が欲しかった」
                    微笑みが唇に浮かび、彼は続けて言った。
                    「他の望みが姿を見せたのがどれくらい早かったかは僕には分かりかねます。あなたにお会いしてから三十分かそこらといったところでしょう」
                    ダーシーはジョージアナが彼女と知り合えて喜んでいたこと、突然中断されて、妹が残念がっていたことを彼女に話した。エリザベスは、彼がウィッカムと妹を見つけるためにロンドンへ旅立とうと意思を固めたのが彼が宿を辞する前だということを彼女に話し続けたので、驚いたように見えた。あの場で彼が見せた厳粛さと心遣いが生じたのは、そういった目的を含む葛藤以外の何物でもなかったのだった。彼女は感謝の意を再び述べ、二人のどちらもその話題を長々と話すことを良しとはしなかった。
                    | −“Darcy's Story”試訳 | 11:51 | comments(2) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
                    Mrダーシーは今日も憂鬱(33-2)
                    0
                      二人は歩き続けたが、ダーシーが十分自制して話せるようになるには少し距離を歩かなければならなかった。
                      「感情を適切に表す言葉を見つけるのが難しいですね…自信を持って…あなたが僕の愛情に応じて下さったと分かるには」と彼は話し始めた。
                      「それでは、六月にダービシャーで別れてからの別離は、あなたから関心を得ることが僕にとってどれほど価値があり、必要なことかを確かめるのに役立っただけなのですね。あなたが僕の妻になることに同意することなど、あの時はありえなかったので、僕は完全にあきらめていたのです。それはかなわない夢でした」
                      彼は言葉を続けながら彼女をちらっと見た。「ですからあなたは、今からはたびたび僕が夢を見ているのではないことを思い起こさせてくれなくてはね」
                      彼はこれに答える彼女の微笑みを見たが、彼女は彼の眼を捉えることはできないでいた。彼は彼女が彼にとってどれほど大切な存在であるか、どれほど長い間この日を待ち望んでいたかを語り続けた。
                      二人は歩き続けていた。考えること、感じること、言うべきことが山ほどあった。
                      ダーシーは伯母がロンドンから帰る際に彼の屋敷を訪問した件について、レディ・キャサリンがロングボーンへの旅をしたこと、その動機、エリザベスとの会話の要旨をどんなふうに語ったかを詳しく話した。
                      「伯母はあなたとの会話を繰り返すことで、僕からあなたが拒否した約束を取り付けようと思ったんです。伯母が僕に語った話で」とダーシーが言った。「希望が持てました。以前にはめったに持てなかった希望がです。特にあるこ言葉が、
                       僕の妻となる立場に必ず付きものの並外れた幸福の源に恵まれるのだから、全体として見れば、不平をいう理由は全くないのでは?
                      伯母がこの言葉を繰り返すのを僕が最初に聞いたとき、僕がどう感じたか言葉では言い表せません。ただ、少なくともいつか一緒に幸せを見つけられるのではないかという希望を得ました」
                      ダーシーは素早くエリザベスをそっと覗った。そして彼女の顔が微笑みで輝いていると思った。だが、彼は心を落ち着かせ、話を続けた。
                      「あなたが絶対に、最終的に僕と結婚しないとお決めになったのであれば、率直に公然とレディ・キャサリンにそうだとお認めになるのは間違いないというあなたの気質は、僕には十分分かっていました」
                      彼はエリザベスが顔を赤らめ、笑いながら答えるのを見た。「ええ。わたしが率直なのはよくご存知でしょうから、きっとそうすることができるとご確信になったのでしょう。あんなにもひどく面と向かって罵倒した後では、ご親戚の皆さまに対してあなたをなじることなどに良心の呵責なんて感じませんわ」
                      「僕に対して仰ったことが、然るべきものではなかったと?あなたの非難は根拠のないもので、誤った前提に基づいたものでしたが、あの時の僕の態度はもっとも厳しいお叱りを受けて当然でした。あれは許されざるものでした。考えるだけで、嫌悪感でいっぱいです」
                      「あの晩については、どちらがより非難されるべきだったか言い争うのはやめましょう」とエリザベスが言った。「厳密に調べれば、どちらの態度も申し分なかったとは言えませんわ。でもあれ以来、わたしたちは両方とも礼節心を向上させたのではないかしら」
                      ダーシーはそれについては穏やかに異議を唱えた。「僕はそう簡単に自分を許すことはできませんね。僕があの時言ったこと、僕の取った態度、あの晩のさなかの言い方を思い出すと今もそうですが、何ヶ月にわたっても言い表せないほどの苦しみでした」
                      ハンスフォードでのあの晩の思い出が彼の胸によみがえり、彼は言った。
                      「あなたの非難は至極妥当なものでした。決して忘れることはできません。
                       『もっと紳士的にお振る舞いでしたら』
                      「そうあなたは仰った。それがどれほど僕を責め苛んだことかお分かりにならないでしょうし、思いつくこともできないでしょう。正直に言うと、その言葉が正当だと認めるのに十分なほどの理性を取り戻すには、かなり時間がかかりました」
                      「確かに、そんなにも強い印象を与えるとは思っていませんでしたわ」とエリザベスが言った。「そのように感じられるとは、少しも考えておりませんでした」
                      「そうでしょうね。あなたはあの時、僕のことをあらゆる適切な感情が欠けている男だと思っていたに違いないのだから。僕がどんなできる限りの手段を用いても、あなたに結婚を申し込むことはできない、申し込みを受ける気にはならないとあなたが仰ったとき、あなたの顔色が変わったことを僕は決して忘れないでしょう」
                      「ああ!あの時わたしが言ったことを繰り返さないで下さいな。あの事を思い出したところで何にもなりませんわ。保証しますけど、長い間、本当に心から恥ずかしく思っておりましたのよ」
                      | −“Darcy's Story”試訳 | 12:07 | comments(2) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
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