Les Liaisons dangereues

  • 2017.10.29 Sunday
  • 19:40
10月最後の日曜日…渋谷…。
去年も来たようなBunkamura シアターコクーン…→参考

なんでハロウィンの日曜に渋谷に来るかなーっ!

学習しねぇなぁ…。あ、でも、子ども時代にハロウィンの文化を体験してないから、なかなかインプットされないんですよ、ええ、ほんと。
で、今年はこれだ↓
危険な関係

↑「ぼんくら亭主」(@あさが来た)と「始末屋のご寮さん」(@わろてんか)
ていうか、五代様は映画で結婚詐欺師で、新次郎さんは舞台でプレイボーイって、君たち、揃いも揃って何でそんなロクデナシ(笑)。
キャスト
玉木宏:ヴァルモン子爵
鈴木京香:メルトゥイユ侯爵夫人
野々すみ花:トゥルヴェル法院長夫人
千葉雄大:ダンスニー騎士
青山美郷:セシル・ヴォランジュ
佐藤永典:アゾラン
土井ケイト:エミリー
新橋耐子:ロズモンド夫人
高橋惠子:ヴォランジュ夫人
冨岡弘:家令、召使
黒田こらん:女中
おいおい…。三味線のお師匠さん(@あさが来た)と、藤岡屋の兄さん(@わろてんか)もいてるやないか…(笑)

『危険な関係』と言えば、真っ先に思い浮かぶのがコレ↓

ちなみに原作は書簡体小説で、複数の登場人物がそれぞれ違う相手に書き送った手紙を編纂して世に出した、という体裁を取ってて、非常に面白いです。
そんなややこしい原作をどう見せてくれるのか楽しみなわりに、取った席が昨年同様コクーンシートで舞台下手半分がほとんど見えないという…orz
上から眺めててやけに目立つなぁと思ったグラサンの客が、中田ヒデらしいというTwitter情報にびっくりぽんや。

てかそれ以上にビックリしたのが、18世紀のおフランスの社交界の話なのに、硝子戸の向こうに見えるのはワビサビの日本庭園で、座布団が出てきて、キャストがそこに座って生け花をするっていう演出。まぁ、それは風流だし、雅だし別にかまわないけど、ルームランナーで汗を流すのは如何なものか。だったらミュージカル『ロミオ&ジュリエット』みたいにケータイとキャリーケースも持ってろっとか思ったりなんかして、ちょいモヤモヤ。
キャスト陣はゴーカだよねぇ。高橋惠子をこんなチョイ役で使っていいんだろうか。MOTTAINAI。
ヴァルモン子爵が主人公なんだろうけど、メルトゥイユ侯爵夫人が食っちゃったなぁ…って思うのは、すいません、わたし、彼の声が超超超ニガテで…(^^ゞ
だったら観に行くなよ!って言われそうだけど、舞台そのものに興味があったしさぁ、別に顔や所作やスタイルは気にならないし。
声だけ聴いてたら、子爵の従僕の佐藤永典くんが良かったです。虎ノ介が出た『新選組血風録』で前髪の美少年やってた彼だねー。

ま、そういう個人的思いは別ににしても、ストーリー的にも子爵役は不利なのよ。
確かに子爵が手練手管を弄して恋のゲームを仕掛けていくから出番も見せ場もあるし裸もあるし、ナマ着替えもあるし、華もある。
でも、それを仕向けて、仕組んでるのは侯爵夫人なんだよね。
だからこそ、陰謀の相棒である子爵が死んだあと、舞台の中央に立って芝居を締めるわけだし。
で、夫人を演じた京香さまがまた素晴らしくゴージャスで、「孤高の悪女」が似合うこと。舞台では美しく終わらせてましたが、原作だとあの後、痘瘡にかかって片目を失った上に数々の訴訟に負けて借金まみれという悲惨な未来が待ってます。ほんと、酷い。
しかし、子爵と侯爵夫人がやったことといえば、罪もない15の少女の初恋を踏みにじり、妊娠→流産させた挙句、絶望して修道院行きを決意させるわ、貞淑な人妻をたぶらかしてそそのかしてのぼせ上がらせた後でポイ捨てとか、自業自得ってもんですな。

『オーファンズ』アフタートークレポ

  • 2017.10.21 Saturday
  • 23:55
終演後、10分の休憩を挟んで、アフタートークが始まります。
ヒトが掃けたらわたしより前方のKuroi様のお近くに行こうと画策してたんだが、結構残ってましたね。

↑虎ノ介の男前ぶりが際立つパンフレット(¥700)

MCはプロデューサーの方でしょうか?仕切の上手いプロでした。
下手から、MC、ハロルド(以下H)、トリート(以下T)、フィリップ(以下P)、演出のマキノ氏(以下マ)の順に着席。
以下、メモと記憶を頼りに書き起こし。録音はしてないからねっ!


MC:七公演を終え、作品の精度がアップしてきました。
T:やりきった感がありますね。
P:暑いです。サウナみたい。
(虎ノ介がマイクを膝に置いてるのを見て)
P:マイクの位置はここ!(マイクを上げるジェスチャー)。喋る気ないでしょ!
H:喋りまんがな〜。(←この後ずっと関西弁だった)
MC:背が高い二人はライトが近いから暑いんじゃないですか。
T:革ジャンが暑いのかも。

MC:改めまして、マキノさんの作品に対する想いはブレてないですね。
マ:ブレてないです。人は一人では生きて行けない。他者と出会わないと、そして死と向き合わないと成長できない。そういう作品です。
多分、初めはこの作品て分かんないんと思うんですよ。観ているうちに「あ、こういうことか」と。そして最後まで観て納得する。
ごまかしのきかない作品です。皆、ガラが悪いけど(笑)
T:日々、空気感が変わる芝居でした。
P:昨日、空気薄かったですよね。
T:そういうとこが繊細な芝居です。
H:(関西弁バリバリで)明日、千秋楽なんですね。三年ぶりの舞台でハードでした。
P:まだ終わってないですよ〜。
H:ホンマにボーっとしてますわ。
(MC、うなづく)
H:意外とやれましたよ。一回目から二回目は体力的にも頭脳的にも不安でしたが。

MC:初めに戻りますが、マキノさん、今回はいかがでしたか。
マ:感情がむき出しなのでごまかしがきかないんです。演技してるって見透かされちゃう。本当にやらなきゃいけない。
トリートが泣くところに演出はしてないです。そういう時にどうなるのか。細貝を信じて、彼の泣き方をしてもらってる。だから、あのシーンは毎日違うんです。
身体性の高い、シンプルな芝居ですから、身体に嘘をつかないように。

MC:全公演の中で、ツーステージは今日だけなんですよね。本当に大変で。
P:トリートは暴れるから、「祐基君を信じて暴れるから」って言ってます。今日のツナ缶が崩れ落ちたのはハプニング。
マ:ああなったら、こちらは助けに行けない。そこに居るヤツで何とかしてもらわないと。
P:ほんとにどうしようかと。(前方席に客に)すみませんでした。
T:コートも下の方に飛ばしちゃって、すみません。
P:何とかなってよかったです。

MC:今日のツーステで残念だったのは、ガムテ外しですね。
マ:ハロルドのガムテ外しね。本来は肩で外して足で落とすんですが、成功率50%なのでね。
(注:このシーン、結局口と手を使って外してます)
H:今日はムリっぽいかもって分かるんですよ。
フィリップが気付く前に取れてしまうと台無しになるので。もう全てトリートのさじ加減によります。あとは現場判断で。
マ:ハロルドがお客に対して後ろ向きなのは、ちゃんとしっかり結んでいるんだよっていうアピール。フーディーニのように縄抜けをするんです。嘘はない。
H:あと一回ですね。
マ:一番ヒヤヒヤする。

MC:動きが激しい舞台なので、くれぐれも怪我をしないでと。擦り傷や打ち身はありましたね。
T:場当たりでやっちゃいましたね。
マ:あそこでホントに青あざが出来たらよかったのに(笑)
(注:トリートが怪我して、フィリップに手当てしてもらうシーンがある)
三人だけでなく、僕も没頭しました。明日終わるのが寂しい、悲しい。真摯に向かい合った作品でした。

MC:虎ノ介さんは、セリフをテープに録ったことすら忘れていたとお二人が(→参照)。
P:何を録ったか忘れてたんですよ。
H:録って満足しちゃって。参考書買って満足しちゃうんです。
(客席バカ受け)

MC:明日、千秋楽を迎えるわけですが、皆さまの中で二回目の鑑賞の方は?
(客席から挙手)
ああ、結構いらっしゃいますね。ありがとうございます。
明日もいらっしゃるという方は?
(客席、挙手)
P:明日は成功しますように!
マ:お父さん、お母さんも連れて来るといいですね。
P:ホントに終わりなんですよ!
マ:この座組みでは一生観られない。

MC:最後に一言。
(PがTの頭を下げさせる)
T:まことにすみません!雨男なんです…。
P:濃密な時間で、あっという間でした。明日が最後なんですね…。
H:お疲れ様でした。本日は本当にありがとうございました。稽古が始まったのが一か月半前。普通は、稽古の後で飲みに行ったりするんですが、今回はまっすぐ家に帰って台本を読んでました。

MC:以上でアフタートークを終了です。ありがとうございました。

もし天使の翼があれば

  • 2017.10.21 Saturday
  • 23:25


さて、本日のメインイベントは、見附の駅から歩いて5分ほどの草月会館内ホールにて上演中の『オーファンズ』です。

Kuroi様とは先月の『オーランドー』同様揃っての観劇ですが、別に示し合わせて取ったわけではありません。仕事してて、土日のどっちか一回観劇ってことになったら、「アフタートーク」の付いてくる今日のソワレを取る確率は高いわけで…。

加藤虎ノ介、三年ぶりの舞台出演!
というニュースが飛び込んで以来、事務所に東京公演を掛け合ったり(当初は兵庫公演しか発表されてなかった)、事務所にチケットを申し込んだのにスルーされたり(なんでやねん)、原作を買おうとしたらAmazonにもスルーされたり(なんでry)、いろいろあって明日が千秋楽ですよ。
意外に若いお嬢さんが多かったのは、虎ノ介ファンの年齢層が下がったのでは決してなく、孤児兄弟を演じた若くてイケメンの役者のファンの方々でしょう(ロビーの祝い花がそれを物語る)。
ああ、しまった。こんなことなら頑張って稼いで、紫のバラの人よろしくゴーカな花を送っとくんだった!

↑どちらのお方か存じませんが、誠にありがとうございます<(_ _)>

演出:マキノ ノゾミ
キャスト
トリート:細貝 圭
フィリップ:佐藤 祐基
ハロルド:加藤虎ノ介


頭の中でイメージしてたよりもっと雑然としたセットに、照明が落ちる前からフィリップが登場して、ガサゴソ動き回ってTVを付ける。
あ、TVは床の上に直置きなんだ。クローゼット、奥行きあるんだ(裏に繋がってる)。
そこへトリート「兄ちゃん」登場。
この兄弟は一体いくつくらいの設定なんだろう。読んでる時は兄弟の会話が幼いので、兄が十代後半かな〜と思ってたんだけど、観ていると二十代以上な気がしてくる(ちなみに役者の実年齢は二人とも33歳)。
トリートのがなり声が若干聴き取りにくかったけど、一目でヤバそうと分かる雰囲気がいいですね。
どうでもいいけど、帰国子女だからかアメリカンな仕草がめっちゃナチュラル。つーか脚長い。そして顔がキレイ。彼がタマネギ部隊の一員だった『パタリロ!』観たかったぜ。

フィリップは意外としっかり喋ってた。
ていうか勝手にもっと幼い喋り方を想定して読んでました。そうだよね、トリートが二十代くらいなら、フィリップもいくら無知でもいい大人か。その見た目大人な彼が字が読めず、知識がないっていうギャップの怖さが観て瞬時に理解できるから「戯曲は演じてこそ」なんだなぁ。
トリートの反応や暴力を恐れてはいるけど、決して嫌いではない。いや、この世に兄しか知ってる人がいない彼にとって、好き嫌いという以前に兄ちゃんはいて当たり前なのか。
この劇で一番変化が見て取れるのがフィリップなんだけど、その喋り方やたたずまいの演技がちゃんと変わってて、急激に知識を吸収して成長してるのを実感できました。

その兄弟の暮らしに突然割って入るのが流れ者ハロルド。

ぎゃー久しぶり、ナマ虎!(←どら焼きではない)

上等なスーツにハット姿とオールバックの髪型も『国語の時間』以来ー!
この虎ノ介のいでたちで、ハロルドの流れ者具合や胡散臭さや悲惨な子供時代を乗り切った海千山千っぷりが一発で分かるよね。ここはフツーにイケメンな俳優より虎ノ介の独断場だと思うんだー。
と言っても、彼だってかっこいいです。それもTVで観るよりかっこええ…。ていうか、TVじゃ彼の良さは伝わらないんだよ。舞台の上の虎ノ介の活きの良さったら、脂の乗った秋刀魚のようだ(←どーゆー例えww)
あとね、彼、歌ってます、「もし天使の翼があればー 監獄を抜け出せるー♪(“If I Had The Wings of An Angel”)」(←いい声!)
一幕の見せ場は、何と言っても奇術師フーディーニ張りの縄抜けと、一幕ラストのトリートに銃を突きつけるシーン。
上背のある兄弟が虎ノ介を抱えて椅子に座らせ、緊縛するところで、「そうだよね、虎ノ介じゃないと抱えるの大変だよね」とキャスティングに納得したのはわたしだけでいい(笑)。
「誘拐された」ハロルドと「身代金を奪おうとする」トリートの立場があっという間に逆転する、実にスリリングで凄みのあるシーンで、虎ノ介の迫力に泡食ってました。トリートじゃなくてもあれはびびるわ。さすがMOTHER最終公演でダイナマイト巻いてただけある(古)。


一幕終了後、舞台セットがガラリと変わります。足の踏み場もない廃屋が、なんと言うことでしょう。上質な家具とオシャレなインテリアで満たされたゴージャスな部屋へ「ビフォーアフター」(笑)。 休憩終了チョイ前にハロルドが登場してプレゼントを置いて去っていくので、この舞台、気が抜けない。そして、照明が落ちる前に再びフィリップが出てきて、包みを開けるところから二幕。
二幕は重いな〜。
「ここ泣かせどころだな」とか、「多分、ここで泣くんだろうな」と思いながら読んでても、読んでる間は淡々と、特に感情を動かされるとこはなかったんです。
でも、ハロルドに目を開かされたフィリップに、あんなに好きだったハインツのマヨネーズより、ハロルドのコンビーフがいいと言われた時のトリートにグッと感情移入しちゃって、思わずフィリップをひっぱたきたくなったからね。ええ、わたしもきょうだいの長子ですから!(笑)
あとは、フィリップが地図を持って、自分の居場所が分かった!と言うところには、涙がちょちょぎれた。
あれはまさに『奇跡の人』の「ウォーター」のシーンにつながるし、作者のライル・ケスラーもヘレン・ケラーの言葉を寄せてるからには、狙ってると思うの。
そして、最後のトリートの感情の爆発ですよ。「元気づけてやろう」と言われてもかたくなに拒否していたトリートが、息をしていないハロルドにすがりつく。
そして悲嘆にくれる兄を、すっかり大人になった弟が抱きしめる。
カーテンコール終わるまでずっと泣いてました…。
生きてる間に肩を抱いて励ましてもらえばよかったのに、死んでからそれがどんなに大切なことだったかを初めて知るトリートがもう切なくて…。

虎ノ介的には息を引き取る直前の、こんなになっても兄弟を気にかけてる姿がものすごい熱量でね。トリートに泣かされる前に、実はハロルドの芝居で涙腺が決壊してました。
あそこは、自分もDead End Kidだったハロルドから兄弟への言葉であると同時に、奇しくも十年前、33歳でブレイクした虎ノ介から、今33歳を迎えた若い二人への励ましみたいで…。
舞台自体も勿論素晴らしかったんですが、虎ノ介ファンでいて、本当に良かったなと思えた夜でした。

時をかける美少年

  • 2017.09.30 Saturday
  • 20:15
Kuroi様と中華街で会ってたのには理由があって、この後、二人してKAAT(神奈川芸術劇場)で上演中の『オーランドー』を観劇しに行ったのだ。

↑一緒に行こうねって約束してチケット取ったわけではないので、席は別々

『オーランドー』は原作がヴァージニア・ウルフだし、abridged ver.だけど一応、原作を読んだことがある程度には知ってます。

↑表紙はティルダ・スウィントン姐さん主演の映画(未見)

なので、制作発表の時点でこれは観なくては!と思ってた上に、演出がKAAT芸術監督の白井晃氏だったおかげで、東京まで行かなくても観られるって言うんで、ありがとう、白井さん(←お誕生日が同じで嬉しい)!
映画のイメージで「男装の麗人」を思い描いてたんだけど、小柄でキュートな多部ちゃんがオーランドー役って時点で「違うそうじゃない」と気付け、自分。

キャスト
オーランドー:多部未華子
サーシャ:小芝風花
エリザベス一世:小日向文世
コロス:戸次重幸/池田鉄洋/野間口徹


ロシアの姫君、サーシャにこっぴどく裏切られ、イスタンブールに行く辺りまでは原作と(多分)変わらないと思うんだけど、二幕はヴァージニア・ウルフが執筆した時代を通り越して、現代まで来ちゃったし、オーランドーは執筆にタブレット使ってるし、えーもうどうしよう(笑)。
原作を基に、アメリカの劇作家サラ・ルール(Sarah Ruhl)が戯曲化したんだそうですが、それだって初演が1998年。そこから更に時代を進めたのかしら、白井さん。
時代を越えようが、性別が変わろうが、本質的なものは人間、そう簡単に変わらないんだよ〜と、1928年に書いていた「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」(笑)
少年から青年へ、そして女になってからの演技の細かい変化がさすがに上手い。若い若いと思ってたけど多部ちゃんももう28なのね〜。

この超現代的なテーマなわりには、結構笑えるシーンも多くて、まさか『オーランドー』でここまで笑えるとは嬉しい誤算。
特に、シリアスな芝居の最中に平気で笑わせに来る小日向さんの芝居は、その白塗りと衣装も相俟って、コントか!とツッコみたくなるほど。
男性にしては高めの声と判断不能なメイクのせいで、もうどんな女優が演じても、彼以上にエリザベス一世を体現できないのでは?と思うほど。

意表を突かれたのが、各人のセリフに役としての発言だけではなく、その背景の描写表現、つまり小説でいうところの「地の文」までが含まれるところで、役になりきって役者が台詞を言った後、「と、オーランドーは××しながらも、○○な様子で、△△した」と付加するのって、どうなんだろ〜と不思議な感じがした。
観てる方からすると、こう前のめりになって各登場人物に感情移入するというよりは、風変わりなやりとりを覗き見してるような、演者との間にワンクッションあるような、そんな感じ?

特定の誰かを演じることもあれば、その時々に応じて名もないモブにもなる三名の男性(=コロス)もそれぞれ芸達者で目が離せなかった。
特に「ぬめっとした」(@あまちゃん)野間口さんや、ぽわわ〜んとした池田さん(劇中劇のデズデモーナがかわいい)のいろんな役が観られて(しかも存在感と間の取り方が抜群にうまい)、お得感がある(笑)。
彼らが、今NHKで放送中の『この声をきみに』に出てくる「群読」みたいな感じで、同じセリフを多重放送で言うと、不気味でもあり、説得力が増すようにも聞こえる。
あのユニゾンで揃う迫力って、聞いててゾクゾクした。

時々、ここに小日向さんや小芝さんも加わって、それぞれ複数の役をこなすんだけど、それがまた違和感なくピタッとハマる。
そういえば、オーランドーとサーシャがスケートするシーンがあるんだけど、サーシャの脚の上がり方がバレエっぽいと思ってたら(早い話が多部ちゃんより脚が上がる)、リアルにスケート経験者だったのね。
『あさが来た』の千代ちゃん役(=あさの娘)だった子だけど、声がきれいで聞き取りやすかったし、舞台もイケるんじゃないでしょうか。
【神奈川公演】
日程:2017年9月23日(土・祝)〜2017年10月9日(月・祝)
会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
【兵庫公演】
日程:2017年10月21日(土)〜10月22日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【東京公演】
日程:2017年10月26日(木)〜10月29日(日)
会場:新国立劇場 中劇場


・「6人で全20役、かつスタッフの役割も。白井晃版「オーランドー」のキャストは大忙し!
・「白井晃インタビュー

Love or Death

  • 2016.10.30 Sunday
  • 18:55
ハロウィンで賑わう渋谷にわざわざ行ってきました。
魔女の仮装しに行ったのではなく、魔女裁判の芝居を観るためです。


るつぼ
作:アーサー・ミラー
演出:ジョナサン・マンビィ
翻訳:広田敦郎
美術・衣装:マイク・ブリットン
主なキャスト
ジョン・プロクター(農夫):堤真一
エリザベス・プロクター(ジョンの妻で病弱):松雪泰子
アビゲイル・ウィリアムズ(パリス牧師の姪で、プロクター家の元使用人):黒木華
ジョン・ヘイル牧師:溝端淳平
アン・パトナム:秋本奈緒美
パリス牧師:大鷹明良
レベッカ・ナース:立石涼子
ダンフォース副総督:小野武彦
メアリー・ウォレン:岸井ゆきの

10/7(金)〜10/30(日) Bunkamuraシアターコクーン
一幕 13:00〜14:35
二幕 14:50〜16:15


ちなみに本日この回、千秋楽。
わたし、コクーン二階のサイドの席だったんだけど、その後ろで立ち見の人も結構いました。

アーサー・ミラーの『るつぼ』といえばコレ↓

もうダニエル・デイ・ルイスが超絶かっこよくってさぁ…って、そういうジャンルじゃなくて、ホントに観るのが苦行な映画。
舞台もなかなかに苦行でした。一幕終わって酸欠っぽくなってたし。
事の発端はアビゲイルの復讐なんだけど、そもそも遊びで終わらせたプロクターが悪いし、プロクターをそういう風にさせたのは私、とか妻のエリザベスは言っちゃうし。
エリザベスがそんなに自分を責めることはないよって「現代の倫理」的には言いたくなるけど、あの頑ななまでに亭主の言い分をスルーする辺りは、ちょっとぞっとしないでもない。
じゃ、誰が悪いのよ?って話だけど、なんかもう結局はそういう風になってしまった、時代と社会が悪いのよみたいな『頭痛肩凝り樋口一葉』を思い出しました。
まぁ、なんだかんだ言ってもやっぱりプロクターは許せんが。
デイ・ルイスはクールで理知的でカッコよすぎるんで、一夜の戯れでアビーによろめくような男に見えないが、その点堤真一は「さもありなん」な雰囲気バリバリでした。勿論、芝居としての話ですよ!
「十戒」の「汝、姦淫するなかれ」が失語症のように言えなくなるプロクター。もう観客はここで(ノ∀`)アチャー。如何にも戯曲的な展開ですが、分かりやすく提示してくれてて良い良い。

プロクターに捨てられた美少女アビーとしてはイマイチピンと来ないけど(何せ比較対象が絶頂期のウィノナ・ライダーなのでw)、トランス状態に入ったり、プロクターを脅したり、瞬時に二枚舌を使い分ける魔性の女の黒木華ちゃんは絶品でした。
彼女の言い分ってハロウィン風に言うと「愛してくれなきゃ、死刑にするゾ」だよね。

そんなわけで一幕は冷静に観てたんだけど、二幕でプロクターが何もかもぶっちゃけて、一度は仲間を裏切ってまっとうな道に進もうとしたメアリー・ウォレン(=『真田丸』のおたかちゃん)が、アビーの煽動でトランス状態になってる少女たちに糾弾されて、「転ぶ」ところなど、演者の迫力とこちらの感情の揺れのせめぎ合いがすごくて、手に汗握ってました。
メアリーが何を言っても、アビーたちは意思を持たない木霊のようにその言葉を繰り返すだけ。
真実を追求するはずのダンフォース副総督は、都合のいいように誘導するのみ。
自分の心の拠り所だった信仰が揺るがされ、安心と安定の大多数の側へ着くメアリー…。
正しい議論や討論とはまるで違う、狡猾な言葉狩りにいじめの世界を見た。

そして投獄されたプロクターが妻と対峙する場面。
ここでようやく和解というか愛情が示される夫婦の場面がすごく良くて。正直、松雪さんがこんなに理知的で信仰深くてでも愛情もある役を演じきれるとは思ってなくて、心の中で土下座してました。
「どうしても生き延びたい」プロクターが嘘の告白に署名をして、これで救われたとならないのがこの戯曲の重要なところで、やっぱり「名前を売ることはできない」「自分の中の善きものを奪われたくない」と絞首刑になる道を選ぶのですが、そこに至るまでずっと涙があふれてました。
まさか『るつぼ』で泣くとは思ってなくて、自分でビックリなんだけど、やっぱり生と死の狭間で揺れ、あがく役どころは堤真一の真骨頂なのかなぁ。以前TV放映で観た『写楽』もそんな感じだったし。
後、心から善良な本当の聖女たるレベッカ・ナースの素朴なセリフと演技が素晴らしい。
「見てないことを見たと言ったらそれはウソになる」って当たり前のことなのに、それができない人間の弱さが本当に歯がゆくて←多分ここで最大に泣いてた

ほんっとうに重くて辛くてしんどい舞台だったけど、それでもやっぱり観たことに後悔はしない。観てよかったと思える良い舞台でした。


さて、魔女裁判のセイラムから抜け出た渋谷では…



DJポリスを初めて見た。
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ブラック・アイルランド

  • 2016.04.07 Thursday
  • 23:50
仕事帰りに世田谷パブリックシアターで『イニシュマン島のビリー』を観て来た。


行こうかどうしようかずーっと迷ってたんだけど、イニシュマン島の隣りのイニシュモア島にまで行った身としては、やはり観に行くべきかと(笑)。
お察しの通り、イニシュモアに渡った日は大雨(ていうか嵐)で、フェリーが揺れて揺れて、そらもう天地がひっくり返るとはこういうものかと思い知った船旅でした。
わたし、四国に四年いた間に何度となくフェリーとか高速艇に乗ってたんで、船旅は慣れてると思ってたんですが、今思えばもう船酔いに近かった。もう少しで〇〇するとこだった…。

原題:"The Cripple of Inishmaan"
作:マーティン・マクドナー
翻訳:目黒条
演出:森新太郎(2014年読売演劇大賞/最優秀演出家賞W受賞)

キャスト
びっこのビリー:古川雄輝
ヘレン(口も悪けりゃ性格も悪い美少女):鈴木杏
バートリー(ヘレンの弟の薄らばか):柄本時生
ケイト(ビリーの伯母、時々石に話しかける):峯村リエ
アイリーン(伯母その2、キャンディーが好き):平田敦子
ジョニー・パティーン・マイク(村の情報屋):山西惇
マミー(ジョニーの飲んだくれの母):江波杏子
マクシャーリー(医者。村で唯一まとも):藤木孝
バビー・ボビー(漁師):小林正寛


ふーん。2013年にダニエル・ラドクリフが「びっこのビリー」を演じて評判になったんだー。
なんか想像つくな〜。素朴そうに見えて実は腹ん中で何考えてるか分かんなくて、愛情に飢えてるようでめっちゃシビアなビリーを演じるラドクリフが。
二幕でね、それまで普通に迫真の演技を見せてたビリーなのに、なんか白々しいというか嘘くさい芝居をするシーンがあるんですが、そらそうだ「芝居の芝居」なんだもの…っていうとことか、ヘタな役者にはできないもんね。
古川君も、同情を買いそうな哀れなビリーでありつつ、野心満々でだまくらかしたってへーきなとこを上手く演じてたように思います。
元々、同じ「杏」なら、謙さんの娘より鈴木杏ちゃんの演技の方が好きなんですが、いやぁ、すごい迫力だった。舞台向きのいい声してんなぁ。ものすごい罵詈雑言の嵐なのに、ビリーにキスするとことか超カワイイ。
あと、アホすぎるアホ演技をさせたら柄本弟はピカイチ!←褒めている

とにかく、内容がブラックすぎて、終演後へたりこんじゃいます。さすが英国の劇作家。
ちなみに、今年のローレンス・オリヴィエ賞を受賞したらしいっすよ↓
マーティン・マクドナーの新作が最優秀プレイ賞を受賞 2016年ローレンス・オリヴィエ賞が決定

あんな人のよさそうな伯母さんsなのになんという腹黒策士っぷり…。あれは要するにビリーが受け取るはずの保険金をがっぽり取っちゃったってことでFA?
そして、最初から最後までうるせー奴だなと思ってたジョニーは天使かっ!
でもアル中の母親(江波さん、さすがの大迫力!)との毒舌合戦はすさまじい勢いで、どっちもひるまないとこが恐ろしいまでに親子(笑)。

嘘をついて合衆国に渡って、でも夢破れて帰ってきて、ずっと願ってた望みがかなえられそうになった瞬間、嘘がホントになって、希望が打ち砕かれる…。

なんだ、この救いようのない閉塞感!

1930年代のアイルランド自体が、閉ざされた逃げ場のない社会なのに、それに輪をかけて出て行きようがないアラン諸島の中くらいの島(=イニシュマン)が舞台ですからね!当然と言えば当然。
それなのに、人々は「アメリカ人が、フランス人が、ドイツ人が来たり、興味を持つくらいなんだから、アイルランドは魅力的」とウソかホントか分からねど、声をそろえて言い続ける。

うーわー!気がおかしくなりそうだーっ!

翻訳劇にありがちな硬い会話じゃなくて、耳に分かりやすい良い訳でした。
特に相手の言うことをいちいち繰り返す不毛な会話が、ビミョーに語末を変えてたりして日本語として聴いてて自然だったように思った。

思い切って観に行って良かったですよ。

アイルランド\(^o^)/

地獄良いとこ一度はおいで

  • 2016.02.20 Saturday
  • 23:10
さて、わたしが大阪に来たそもそもの理由がこれだ↓
『桂米朝追善芝居 地獄八景亡者戯』@大阪松竹座




なんばを歩いてて突然出てくるこのクラシックな建物、劇場だったのね←今回初めて知ったw
趣旨といい、演目といい、出演者といいまず東京じゃやらんだろ!
…と早々に見切りをつけて、発売当日に一等席をゲットー!←気合入りまくり
前から五列目の花道の隣りだぜ!←どんだけ〜
本日の主なキャスト
泥丹坊堅丸(売れない噺家):桂 ざこば
山井養仙(やぶ医者):江口直彌(松竹新喜劇)
法螺尾福海(山伏):桂 団朝
名古屋山佐(出雲阿国の用心棒兼ダンサー):ISSA(DA PUMP)
芸者小糸:三倉茉奈
出雲阿国:桜花昇ぼる(元OSK)
若旦那作次郎:長江健次
堅丸の娘お玉:関口まい
堅丸の女房お松:三林京子
閻魔大王:桂 文乃助

ゲスト:澤田隆治

あ、ほんとに「主な」キャストだけです。他にも三つ以上の役を掛け持ちして舞台に出てはる米朝一門の噺家さんがようけいてはるんやで。
若旦那のお弟子さんの團治郎くんや米輝くんは閻魔の庁の役人の役で左右に並んでたり、吉朝門下のあさ吉さんや佐ん吉さんが結構目立つ役で出てたり、いろいろ見つけるのも面白かった。
え?若旦那?
そーれーがー!!
あの人、今茂山一家とオペラ狂言やっててさぁ、そっちにかかりっきりで声(とお面)だけの出演なのよ。ま、いいけどさ。

ストーリーは「地獄八景」をベースに、「たちぎれ線香」「はてなの茶碗」「けんげしゃ茶屋」「花筏」「高津の富」なんかの登場人物やネタをちりばめてあって、そらもう上方落語好きならすぐわかります。
一見関係ないようなダンスシーンも、出雲阿国一座の皆さんはOSK(大阪松竹歌劇団)関係の方々で、実は米朝夫人がOGという縁で、納得のご出演。
ちなみにISSAはざこびっちのお友達だそうですよ(笑)。
もー久しぶりに見て懐かしいったらありゃしない←妹が昔DA PUMPのファンでさぁ…

主役のざこびっちは、もう絶対台詞覚えてないやろ!ってツッコみたくなるくらい、フリーダム。でもそこがいいんだよねぇ。ざこびっちの米朝師匠への愛があふれる筋書きだから、言葉尻なんかきにしたらあかん。意図するセリフが、彼の言葉で話されるのであれば、アドリブだろうとその場限りであろうとどうでもよろしいのや。
「末期哀れは覚悟の前」
「良い噺家になる前に、よい人間になりなさい」
もうそのまま日めくりカレンダーにしたくなるほど素敵な言葉を残しはったんだなぁとグッときますわ。

日替わりで米朝師匠にゆかりのある方々が閻魔の庁に来訪されるんですが、この日のゲストは大阪の芸人が足を向けて寝られないという関西放送界のお偉方で、この方が言わはるには「世間では米朝師匠は学者肌やと言われてるが、実際のところ、人と人を結びつけ、地盤を作りはった方です」と。
米朝師匠がいたからこそ、違う一門、個性の強い師匠方が集まって、上方落語、ひいては上方芸能が盛り上がったんだと。
これって、ものすごく地味なことだったんだろうけど、いかにも米朝師匠らしいなぁって感動しちゃったよ。


いやほんまに、わざわざ来た甲斐がありました。

二人の女王

  • 2015.06.28 Sunday
  • 22:04
先週の日曜日、録画したNHKの『ザ・プレミアム 天海祐希 魔法と妃と女たち』のスコットランド編を観た
→ホリールード宮殿やエディンバラ城が出てきて、懐かしくって超萌えた
→そこで暮らしてたスコットランド女王、メアリー・ステュアートの話が予想外に面白かった
→そういえば、今渋谷で『メアリー・ステュアート』やってんじゃん!
→某お得サイトでたまたま6月28日の公演分だけ、手数料なしで安く買えることが判明
→締切4時間前だったので慌てて購入し、すぐさまファミマに発券しに走った
→本日、観劇決定(←今ここ)

そんなわけで、半年ぶりのパルコだお!


フリードリッヒ・シラー作『メアリー・ステュアート』の自由な翻案
作:ダーチャ・マライーニ(訳:望月紀子)
演出:マックス・ウェブスター
出演:
メアリー・ステュアート/ナニー(エリザベスの侍女)/レティス・ノールズ(ダドリーの妻):中谷美紀
エリザベス・テューダー/ケネディ(メアリーの乳母):神野三鈴
リュート演奏:久野幹史/笠原雅仁

なんと、「1990年に宮本亜門演出」で「麻実れい×白石加代子で上演」の過去があったとわ!それ、すげー観たかった。
二人芝居は初めてではないけど、今回珍しいなーと思ったのは、二人の女優がそれぞれ女王を演じるわけですが、それだけではなくて、それぞれ自分じゃない女王のお付きの人の役でもあることです。
でも、中谷さんの役はどれも「愛に殉じた人」で、神野さんの役は「男より忠勤に励んだ人」という共通点はある。
暗転で役が入れ替わるとか、幕ごとに違うとか、そんな悠長な切り替えはなく、ある遣り取りが終わり、女優たちが背中を向けたり、舞台脇へ移動したその瞬間、二人の立ち位置が切り替わるという、役者も大変だが、観てる我々もハードな芝居。
しかし、そこは実力派の二人。声色や姿勢の違いで瞬時に別人になり替わる。うーん…役者って怖い。
ちなみに舞台上には簡素な机や椅子のみで、背後が鏡になってるので、客席の前二列くらいまではばっちり反射して見えてます。裁判シーンなど、その二列に照明が当たって、まるで陪審員のよう。
あと、役者が後ろを向いている時の表情も鏡で十分見えるので、客には嬉しい装置だけど、役者は気が抜けないですね。
舞台脇にリュート奏者が控えていて、BGMを奏でてくれてます。いかにもシェイクスピア〜って感じで気分が盛り上がることこの上なし。

イタリアのフェミニストが翻案しただけあって、男に振り回されて生きていたメアリー、男を利用して生きてきたエリザベスの女のとしての苦悩がひしひしと伝わる。
どっちも哀しい女ですが、「学問も教養も芸術も教え込まされて、望まれて王位についたと思ったら、ご結婚はいつですかー?お世継ぎを早く!とか、うるさいんじゃゴルァ!!誰がアホな男の意のままになるかい、ボケ!」(←意訳)なエリザベスの叫びには、思いっきり共感した。ていうか、絶対現代社会をあてこすってるよね。
何しろイングランドの女王陛下は手紙ひとつ書くのにも、相手、内容、タイミングに合った文章でなければ、容易に書き上げないほど慎重で聡明なお方。
と言いつつも、エリザベスの心には寵臣ロバード・ダドリーへの複雑な愛情があって、まぁ、そこら辺は映画『エリザベス』を見てくださいって感じで簡略化されてますけど、要するに「好きなんだけど、イケメンなんだけど、一国を任せるにはおバカすぎなのよね、こいつ…」で、結婚には至らなかったことにちょっとは未練があるわけで。
一方のメアリーは、あんまり夫運はないものの、好きになったら一直線、政治的配慮?何それおいしいの?と、突っ走る。その脇と詰めの甘さが命取りになって、幽閉されてしまったんだけど。
理想は両者のいいとこどりなんだろうけど、そんなおいしい話はこの現代だってそうそう簡単に手に入らない。権力握って、女とっかえひっかえのヘンリー八世はよくて、アタシたちは何でダメなのよ!という二人の怒りが爆発するのが、後半の「ダドリーを豚呼ばわりして、溜飲を下げるロックコンサートシーン(仮称)」。
いやぁ、このマイク片手にロッカー顔負けに歌い煽る二人を観るだけでも、この舞台のチケットを取る価値はあるわ(笑)。
それまで固唾をのんで二人の女王のやり取りを見守って来た観客も、もう笑うしかない。でも笑っていいのかちょっと判断付かずに戸惑ってるのが(自分を含め)伝わる微妙な空気感(笑)。

神野さんは高畑淳子主演の『欲望という名の電車』で妹ステラを演じてたのを観たことあるんだけど、まず声がいい←出たな、声フェチw
そして安定と安心の演技がこの作品の屋台骨になってるという印象。
中谷美紀は、別にファンでもアンチでもなく、まぁしいて言えばTVドラマより映画、映画より舞台で観たい女優ってイメージしか持ってなかったんだけど、やっぱりこの人、舞台向きですね。去年の大河ドラマでさえ、芝居が舞台っぽいって感じしてたもん。

パンフレットは¥1,800と少々お高い上、ものすごく立派なハードカバー装丁で、買うのやめようかなと思ってたんですが、英国ルネサンス期の歴史や、参考DVDの紹介(もちろんあったぞ、“The Tudors”)、そして二人の女優のインタビューなど、結構中身が濃いので、損はない。
ていうか、英国史に疎いとさっぱり分かんない芝居なので、開演前に予習するか、終わってから復習するのにもってこいです(笑)。

それでも僕はやってない

  • 2015.04.25 Saturday
  • 21:33
とかいう映画があったけど、テーマはそれだ!な芝居を観に、新国立劇場へ←本日のメインイベント
ウィンズロウ・ボーイ
20世紀英国を代表する劇作家テレンス・ラティガンが、実際の事件にヒントを得て書いた4幕劇『ウィンズロウ・ボーイ』。
本作は、ロンドンの中流家庭を舞台に、窃盗を働いた罪で海軍士官学校を退学になった息子の無実を信じ、その名誉を回復させようと闘うことを決心した家族の姿を通して、"正義"とはなにかを問いかけます。重くシリアスなテーマを扱いながらもウィットとユーモアに富んだ会話劇として、1946年初演時1年を超えるロングランを記録。48年には映画化もされ、それまで喜劇作家として売れていたラティガンの名声を更に高めた作品です。

去年、新国立の「2014/2015シーズン」演目が発表になった時に、ひそかにコーフンしたものです。
なぜならば!わたしがロンドンまで舞台を観に追っかけたジェレミー・ノーサム出演映画の原作戯曲だから(←サー・ロバート・モートン役)。

↑もちろん、持ってるw
これねー、昔、深夜の民放で放送してたんだけど、DVDは日本では未発売なんだよねー。
今回の舞台をきっかけに放送してくれるかなーなんて淡い期待もあったんだけどな…。
ちなみに、この99年版映画の監督はDavid Mametで、その縁でウィンズロウ家の長女役に自分の妻をキャスティングしてます。

さて、本日の舞台。
作:テレンス・ラティガン
翻訳:小川 絵梨子
演出:鈴木裕美
主なキャスト
アーサー(父):小林 隆
グレイス(母):竹下景子
サー・ロバート・モートン(弁護士):中村まこと
キャサリン(長女):森川由樹
ディッキー(長男):山本悠生
ロニー(次男):近藤礼貴/渋谷龍生(Wキャスト)
ヴァイオレット(メイド):渡辺樹里
ジョン(キャサリンの婚約者):川口高志
デズモンド(ウィンズロウ家の事務弁護士):チョウ ヨンホ
おお!舞台セットが英国中産階級のステキな客間だ!

開幕前からジャズが流れていい雰囲気。

映画を観て思ったのは、法廷シーンがまったくないことと、常に攻めの姿勢でいるサー・ロバートの動向より、裁判沙汰に持ち込んだウィンズロウ家(特に父と娘)の静かな言動に重きを置いているなということ。
ジェレミー・ノーサム目当てで観ていたので、ラスト近くの結審に至る法廷での感動の過程がメイドの語りを通してのみの描写に物足りなさを感じていました。
でも、今日の舞台を観たら長年の疑問が解消されたというか!
そりゃ、主軸はウィンズロウ家の人々だもの。サー・ロバートの演説にどれだけ感動しようとそんなのはどうでもいい。要は多大な犠牲を払ってようやく報われたウィンズロウ家の勝利がすべて。
でもねー、「らしくない」ぐったりした姿を(我々視聴者に)さらしたすぐ後で、キャサリンが入ってくるや否や元の自分を取り戻してシャキッとするサー・ロバートの姿には、グッときますよ。映画だと、なんかこの二人、絶対結ばれないんだけど、既に惹かれ合ってるじゃん!っていうのが分かる粋なシーンがラストにあって、それをまたサー・ロバートが(というよりジェレミーさんが)、表情変えずにシラっと言うのが萌えるのよ。

今日の舞台のサー・ロバートはめっちゃいい声!ロニーが本当に無実かどうかを探るための畳み掛けるような詰問シーンなど、低音ヴォイスに惚れ惚れ。あ、ちなみに演じた中村さんは『ちゅらさん』の牛柄パジャマの入院患者だったそうですよ←何となく覚えている
とにかく一家の要、アーサー・ウィンズロウ役の源さん@新選組!がステキです!
一見厳格な威張り散らしている父親に見えるんだけど、三人の子をどの子も慈しみ、愛する優しいお父様。セリフと動作の一つ一つに温かさがあるというか…泣かせるし〜。
小林さんていうと、なんか小市民的なおどおどした頼りないイメージなんだけど、別人のように威厳たっぷりな英国紳士でした。さすが役者じゃのう…。
竹下さんはいつも通りの竹下さん。ウィンズロウ家の長男は確実に母親のDNAを受け継いだなと一目で分かる雰囲気。
個人の小さな正義が守られない国に、国家の大正義を語る資格はない!たとえ、それが第二次世界大戦前の緊急事態であっても…。14歳の海軍士官候補生の汚名を晴らすのが目的じゃないところがこの芝居の奥深さ。


翻訳劇なのにセリフがとってもこなれていて、あんだけシリアスな法廷劇(法廷は一切出てこないけど。場面は客間だけなんだけど)なのに、セリフだけで笑えるようになってて、巧い訳だなぁと感心してたら、『OPUS』の演出家でした。あの時も翻訳を手掛けてて、あれはわたしも原作を読んでいたこともあって、やっぱり訳で感心してたんだったわ。
長女と次男にもう少し声量と滑舌がほしかったところ。特にロニーは、サー・ロバートとのシーンで頑張れ、超がんばれ!…って言っても明日で千秋楽ですが。

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飲んだくれたちのメリークリスマス!

  • 2014.12.21 Sunday
  • 19:39
今年最後の観劇は、パルコ劇場での『海をゆく者』(“The SEAFARER”)となりました。

お恥ずかしい話、このチケットを取った理由はアイルランドの劇作家、ジョン・ミリントン・シングの戯曲と勘違いしたからです。そっちは『海に騎り行く人々』(“Riders to the Sea”)だった…ほんま、アホやで。
作:コナー・マクファーソン
訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演
小日向文世:ミスター・ロックハート
吉田鋼太郎:リチャード・ハーキン
浅野和之:アイヴァン・カリー
大谷亮介:ニッキー・ギブリン
平田 満:ジェームズ・“シャーキー”・ハーキン

見よ!この実力派の熟年実力派俳優揃い踏み!
いやぁ、渋いおっさんの男祭り、たまらんですなぁ(←おっさん、言うな!)
こんな渋いキャストだから、てっきりチケットが余裕で残ってると思ったら、Sold Outなんだとか。2009年の再演だもんね、皆、分かってるぅ〜。

てゆーか、平田さん、第49回紀伊國屋演劇賞受賞おめでとうございます!


で、全然予備知識なしに観に行ってしまったんだが、予想に反してぐいぐいのめりこんで観てしまった。一幕終わった瞬間、ふーっと力が抜けたほど、力入れて観てたっぽい(←超疲れたw)
場所はダブリン近郊(ホースの辺りかと思われ)、時はクリスマスイヴからクリスマスの朝にかけて。
陽気に酔っぱらう盲目の兄、リチャードと、彼の世話をするために帰郷した弟のシャーキーが暮らしている。友だちのアイヴァンとともにクリスマスの買い出しに出かけたその晩、シャーキーの昔の女、アイリーンの今カレ、ニッキーが、ロックハートという紳士を連れて訪れる。夜通し、カードをするために…。

コヒさんと大谷さんが登場するまでの長ーい一幕の大半を、伝様吉田さんが緩急自在に舞台をリード。駄々っ子のように弟にあれしろこれしろと指図しまくりで、すっかりシャーキーに肩入れしてしまう。しかし、どんだけ酒飲む気だよ。
リチャード:俺は!アイリッシュコーヒーが飲みたいんだ!
シャーキー:コーヒー、切れてるって言っただろうが!
リチャード:じゃ、アイリッシュだけでいい
それ、ただのアイリッシュ・ウィスキーじゃねーかYO!

他にも、アイリッシュブレックファストが食いたい!とか、ダブリンの繁華街の通り名てんこ盛りだとか、そらアイルランドスキーにはたまらん芝居ですわ。

しかし、すごいぞ、吉田鋼太郎。あれだけの意味のないセリフを噛まずに、淀みなくまるで歌うように自然に伝える力量。しかも素面の時の発声が超美声。さすがシェイクスピア役者。
デスノート』が楽しみ!


って、気が早いですね。
二幕は、酔っぱらいの飲んだくれ男が5人そろってカードに興じる場面が続く中、シャーキーとMr.ロックハート(←もう名前からして意味深)の意外な過去が明かされる。
まぁ、早い話がMr.ロックハートは人間じゃないわけで…(『デスノ』でいうところの吉田さんの役だな)。コヒさんの終始冷静なんだけど、下半身だけ千鳥足って演技にも笑えます。
最後の大勝負にシャーキーが負けたら命をカタに…というのが、彼がここへ来た狙い。
そして勝負の行方は意外な方向へ…。

シャーキーの暗い過去、そして酔うと一変してしまう性格故のこれまでの人生。一幕でずーっと抑え目だった分、二幕の平田さんの激変っぷりが大迫力です(←声がいいだけに激昂しても聞き惚れる)。
勝負が済んでいよいよ…というギリギリのところで、前日から「メガネがないない」と探していたアイヴァンが逆転の場外ホームラン。観客一同、大笑い。
恋敵のニッキーが意外と面倒見が良かったり、うざいとしか思えなかった兄貴の優しさだったり、誰も豹変したわけじゃないのに、見方が変わるとすべてが反転して見える。今まで気がつかなかったことが見えてきたシャーキーが朝日に照らされて幕。
派手な場面展開や仕掛け、劇的なストーリーはなく、俳優たちの技量にかかってるだけのシンプルな舞台ですが、いい意味で裏切られたというか、温かい気持ちのまま劇場を後にできる、良質な芝居でした。
どいつもこいつも飲んだくれのどーしよーもない奴らの繰り広げる素敵なクリスマスに乾杯!


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