蘇我の娘

  • 2017.05.12 Friday
  • 21:35
と言えば、厩戸皇子のヨメとなった刀自古ちゃんのことかー!

…と思ったそこのアナタ!『日出処の天子』読みましたね…(笑)。
そうではなくて、刀自古の兄(つまり毛人=蝦夷)の息子、入鹿の娘が主人公の『蘇我の娘の古事記』読了。

著者:周防柳  出版社:角川春樹事務所
定価:¥1,836 発売:2017年2月
入手経路:地元図書館にて貸出し

主人公コダマは入鹿の側女の娘として生まれるんだけども、乙巳の変(中大兄皇子&中臣鎌足による蘇我入鹿暗殺)が起きて(645年)、どさくさに紛れて渡来人船恵尺に引き取られて育つ。娘時代に海の向こうで白杉江の戦いがあって(663年)、何度も遷都を経験し、壬申の乱(672年)で夫を失い、幼い頃から卓越した記憶力で覚えてきた「ふることぶみ(=古事記)」を執筆するって、さすが波乱万丈な古代史を生きた女の一生…。
なんと、蘇我入鹿は皇極天皇の実子であった!

…という衝撃の設定が大前提で繰り広げられる、王家と百済からの渡来人一族の関わり合いもドラマティックですが、いかにして太安麻呂が撰上したといわれる『古事記』の編纂が、こんな成り行きでできました!というフィクションも目からうろこで面白い。
古代国家が成立する以前のヤマト王朝時代が好きな人に自信を持っておススメする。

「歴史は勝者のものである」と思ってきたけど、コダマは「敗者による歴史」を紡ぐ。そういえば『古事記』は敗者にも想いを馳せたエピソードが多いのよね…。
権力者の敵である父を持ち、その血を引くことはすなわち為政者から命を狙われ、それがために育ての一族の命運を握る娘。不幸にして盲目でありながら、盲目が故に伝え聞いた物語を記憶する。
そんなコダマの物語の合間合間に挟まれる、あちらこちらで伝え聞く「お話」が彼女の人生とリンクしていたり、同じような悲劇が何度も繰り返される王家の歴史が、そっくりそのまま今、手にできる『古事記』になっている。

『古事記』には、史実ではなくても真実が隠されているのだ。

19 Years After

  • 2017.04.21 Friday
  • 21:10
だそうですよ…。
わたしが次にロンドンへ行く日まで上演してくれてるかしら。
ちなみに来年春からはブロードウェイでも開幕予定。

そんなこんなで、その舞台の脚本(小説ではない)を読了。
ハリー・ポッターと呪いの子

著者:ジャック・ソーン(脚本)、J・K・ローリング/ジャック・ソーン/ジョン・ティファニー(構想)
訳者:松岡 佑子  日本語版発売:2016年11月11日
出版社:静山社   定価:¥1,800+税
入手経路:地元図書館にて貸出

昔は、いろいろ問題になってる日本語訳でなんか読むもんかい!と意地になって途中から英語で読んでたけど、いまさらペーパーバックを買うほど『ハリポタ』に興味があるわけでもなく…(^^ゞ
生きてるだけで英雄だったハリー・ポッターの性格があまりよろしくないことは、まぁ分かってたことですが、なんというか、もうちょっと次男に対して親身になってやらんかーい!と突っ込みどころが多々ある父親になってて、ショックかもー。
ていうか、同じ兄弟なのに兄ちゃんとの差はどこから来てるんだ?名前のせいなのか?(兄はハリー父+シリウス・ブラックから、弟はダンブルドア+スネイプから)
それに比べたら、徹頭徹尾、(血統主義故に)己の息子を信じてるマルフォイのほうが父親としては上だと思うの(しかも、予想外に愛妻家←奥さん、死んじゃったけど)。
ハーマイオニーとロンの夫婦は、ま、こうなるだろうなぁという安定のかかあ天下でワロタ。
あーでも一番びっくりしたのは、ヴォルデモートとベラトリックス・ストレンジとの間に娘がいたって設定だわ。ファントムとクリスティーヌの息子をラウルの子として育ててる『ラブ・ネバー・ダイ』並みのトンデモ具合。

ストーリーの全体のカギとして、「逆転時計」を使って歴史を修正する、というのがあって、セドリックや嘆きのマートル、ドロレス・アンブリッジやらがわらわらと出てきて、シリーズ読んでたらそらもう懐かしいのなんのって。
つまり、昔を懐かしみつつ、新しい世代の誤解と葛藤に「違う、そうじゃない」とハラハラすることができる子さん読者大歓迎、ご新規さまお断りの世界であった(笑)。
原作シリーズ最終巻を読んで、「で、その後はどうなったの?」と知りたがる読者へのよくできたアンサープレイだと思います。

アラベスク

  • 2017.04.17 Monday
  • 14:55


いつまでたってもピアノ初心者のわたしにとっては「アラベスク」と言えば、こっち↓だが(笑)


第8回「このミステリーがすごい」大賞受賞作、『さよならドビュッシー』読了。

著者:中山 七里  出版社:宝島社
発売:2010年1月  定価:¥1,400+税
入手経路:地元図書館にて貸出し

「このミス」大賞といえば、確か大賞は取れなかったけど、『タレーラン』も何かを受賞したはず。
今回借りて読んだきっかけは、なんだっけ…。あ、そうそう、ネットで(一部だけ)読んだフリーコミックの原作がこれでした(笑)。
そういえば、題名はどっかで聞いたことあるなぁと思ったら、映画化もドラマ化もされてたわ。相変わらず、トロい…。


ドラマ版↓


原作限定で感想書くけど、トリックありきの人物設定だなぁ…。
と、事件前のプロローグ段階で既に、このトロくさいわたしでさえも気づく、いわくありげなキャラ設定。
年も背格好も顔つきもピアノの技量もそっくりな従姉妹というだけの設定だと、ラストのトリック暴きまで行きつかないので、かたっぽをインドネシア国籍とかイスラム教徒とか、特異すぎるキャラクターに仕立て上げちゃったので、最後の「犯人は君だ!」とシーンも「うん、そんなこったろうと思った」。
あと、謎解き役のピアニストが実は元司法修習生とかいうのも、ちょっと盛りすぎでは?
ただ、この小説の面白さはそういうミステリ云々よりも、何が何でも賞を取ってやる!という一少女の気迫とか、クラシック音楽の解釈の仕方とか、異端となった者への対応とか、そういうとこかなと思います。
いやだって、このヒロイン、結果的に重大な罪を犯してるのに、自分で言うほど罪悪感が感じられなくて…。
ミステリとしてというより、道義的にその辺、どうなのよってツッコみたくなった。

First Penguin

  • 2017.04.12 Wednesday
  • 16:40
一人の勇気ある女性をペンギンに例えたドラマがありましてな…↓

五代:日本から遠く離れた南極いう氷だらけの所に
ペンギンという鳥がいてます。(『あさが来た』第54話)
が、なんということでしょう、南米大陸にもペンギンはいるのです!(南極にいるのは皇帝ペンギンとアデリーペンギン)

というわけで、ペンギン繋がりというだけで借りてみた『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日』読了(笑)。

著者:トム・ミッチェル 訳者:矢沢聖子
出版社:ハーパー・コリンズ・ジャパン
発売:2017年1月 定価:¥1,620(税込)
入手経路:地元図書館にて貸出し

そういうくっだらな〜い動機で読んだのに、予想外に面白くて、感動してる自分にびっくりぽん!(笑)
アルゼンチンの全寮制男子校で教師となって赴任した英国人男性の若き日の回想録です。
たまたま休暇で訪れたウルグアイの海辺で重油まみれのマゼランペンギンの死体の山に遭遇。一羽だけ何とか生きてるペンギンを拾って、洗って、乾かして、戻そうとしたけど、ついてくる〜!
…というわけで、税関の目を何とかごまかしてアルゼンチンに連れてきた作者は、学校の屋上で飼い始めるという、嘘のような本当の話。
俗に「目は口ほどにものを言う」と申しますが、作者とペンギン(命名:フアン・サルバドール)との間に言葉はなくとも、「目と目で通じ合う、そうゆう仲♪」(@工藤静香)w
さらに、悩める青少年の相談に乗り、成長を助け、生活に潤いを与える、なんという万能ペット!
わたし、四足の動物は基本ニガテなんだけど、二足歩行のペンギンなら飼ってもいいかも…とか思っちゃいました。

この実録「ペンギンの育て方」(違)がリアルなのは、二人の別れの話です。
なんと、作者が休暇で留守中に、友人に預けられていたフアン・サルバドールは暑さのせいかそれとも病んでいたのか、あっけなく急逝してしまう。
なので、別れの描写は伝え聞いたものでしか描きようがなく、その分「死んだ」という現実感がないってのが現実味あるというか。
読者としては肩透かしでもあるんだけど、最後まで読むと、そこを補って余りある何十年後かに訪れた奇跡に作者同様、感極まるのであった。

FYI:「2017/2/23付日本経済新聞夕刊


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モノが語る「物語」

  • 2017.02.26 Sunday
  • 10:31
ブロンテ姉妹の抽斗 物語を作ったものたち』読了。

原題:"The Brontë Cabinet:Three Lives in Nine Objects"
著者:デボラ・ラッツ 訳者:松尾恭子
出版社:柏書房   発売日:2017年1月10日
定価:¥2,600+税 入手経路:地元図書館にて貸出し

ブロンテ姉妹といえば、女が物書きなどとんでもないという風潮のヴィクトリア朝が生んだ奇跡の文学姉妹なわけですが、彼女たちが遺した生活用品からその生涯をたどるという一風変わった伝記が本作です。
なんかもう「嵐が丘」的に荒涼とした牧師館で家族が身を寄せ合って慎ましく暮らしたってイメージですが、とびきり裕福ではなかったけど、決して貧窮生活を送ったわけではなかったと再認識。
それが証拠に、姉妹は家事の合間に「豆本」を作り、「裁縫箱」を持ち、「杖」を持って「犬」と荒野を散歩し、「机箱」で物語を書いたのだ。
そんな作家の愛用品と作品の関連について述べながら、姉妹の一生をたどる形式になっていて、伝記としての体裁にもなってて読みやすかった。
遺品から生活や考えを紐解くという作業の細やかさもさることながら、三姉妹の関係性についての言及も面白かった。bossyなシャーロットとそれに抗うエミリーとか、エミリーとアンの秘密の共有とか。
この三姉妹の間に、唯一の男兄弟であるブランウェルの存在がまたそれぞれに影響を与えてて面白い。


↑いつかハワースを歩きながら、これを聴きたい←厨二病w
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悪い夢は忘れてしまおう♪

  • 2016.12.30 Friday
  • 23:56
...うん、それは『傷だらけのローラ』だね。

↑よく聴いたら、ローラが何で「傷だらけ」なのか分かんない歌詞だw

2016年最後の読書は、表紙からしておどろおどろしい『傷だらけのカミーユ』。

原題:“Sacrifices”
著者:ピエール・ルメートル  訳者:橘明美
定価:¥840+税 発売:2016年10月
出版社:文藝春秋社(文春文庫)
入手経路:地元図書館にて貸出し

祝・ルメートル作品全邦訳読了!
時系列的に言うと
『悲しみのイレーヌ』→『その女アレックス』→本書
ということで、イレーヌの悲劇から5年経ってるのが「今ココ」。
ようやく立ち直りつつあるカミーユの恋人、アンヌが巻き込まれた事件発生から解決までの三日間の話なので、テンポよくサクサク読める。…けど、一筋縄ではいかないのがルメートル。
一命を取り留めたアンヌを執拗に追う「俺」とはだれなのか。
恋人としてアンヌの危機を救いたい一方で、刑事としての立場故、苦境に陥るカミーユ。
じりじり追い詰められるアンヌとカミーユに、p.226まではイライラしながらも頁をめくるのすらもどかしい。
ところが、三日目になって次々と発覚するアンヌの過去や、カミーユの過去の人間関係が、急激に物語の雰囲気を変えてきます←ルメートル作品あるある
そして、ただでさえ辛いカミーユの状況に、また傷が増え、ホントに邦題通りだよという結末。

わたしはこんな暗い気持ちのまま、年越しを迎えるんかい!←自己責任

干支一周

  • 2016.11.18 Friday
  • 19:13
そういえば、映画『ブリジット・ジョーンズの日記』の二作目制作から実に12年。現在、三作目「ダメな私の最後のモテ期」が公開中。
ヒュー様が出ないと知って、かーなーりテンション下がってるわけだが、Mr(マーク)ダーシーは出るわけだし、毒を食らわば皿までだ。来週にでも観に行こう。
が!基本、原作付きの映画を観る前には必ず読むタイプなので、興味なくて放置してた原作を読まないことには映画館へ行けないのだった…。

そんなわけでようやく『ブリジット・ジョーンズの日記 恋に仕事に子育てにてんやわんやの12か月』読了。
 
著者:ヘレン・フィールディング 訳者:亀井よし子
出版社:KADOKAWA   価格:(上下とも)¥1,620(税込)
発売:2015年6月2日  入手経路:地元図書館にて貸出し 

なんということ!

原作で退場したのは、マークの方じゃないかああああっ!
紛争地域で地雷を踏んで命を落としていたとか、誰得なのその設定!!
信じらんない…過去二作のすったもんだは何だったんだ。
あ、結婚はちゃんとしてた。そして子供が二人いた(ブリジット50代にしては、子どもの年齢が幼すぎる気もするが)。
なんかもうこの事実がずっしりと胸にのしかかり、ページをめくれどもめくれどもちっとも頭に入って来ない小説…。

いやちょっと待って。頭に入って来ないのは前二作も同じだった!(笑)

そうなのよ。訳の問題なのかそれとも原文からしてそうなのかは不明なんだけど、ブリジットの一人称の文体がとにかくイタイ女感であふれてて…。
なのに、最終的には「君のそんなとこがいいんだ」って言ってくれる人がいて、わたしとしては「は?どこが?」と食って掛かりたくなるわけで。
今度のもやっぱりそうだったわ。
まぁ、前二作と違うのは、子どもの世話もそれなりにしているってところで、そこら辺は素直に称賛したい(何しろ12年経ってもわたしの状況、変わってないw)。
あと、男を捕まえておくのに多大な時間と労力をかけてるブリジットに、色恋に何ら興味を持たずに日々を過ごすわたしはホモ・サピエンスとして失格ではないのか?と言われてる気がしてくるのがムカツク(笑)。

ところで、『ブリジット・ジョーンズ』といえばジェーン・オースティンリスペクト。
一作目は『高慢と偏見』、二作目は『説得』をベースにしているわけですが、三作目は何だろう。
あさっての方向の若い男と付き合っていたのが、結局別れて、最終的には自分に説教してくる男と再婚…。めっちゃ拡大解釈した『エマ』かな?

Wieder ist er da

  • 2016.10.27 Thursday
  • 16:36
ドイツ語の面白いとこは、動詞が二番目にセットできれば、あとは語順を入れ替えてもいいってとこ。
Ach, entschuldigen Sie, bitte.
上巻はとっくに読み終えていたのに、前に借りてた大バカ者方がなかなか返してくれなくて、このたびようやく下巻読了の映画『帰ってきたヒトラー』の原作です。
 

著者:ティムール・ヴェルメシュ  
訳者:森内 薫   出版社:河出書房
発売日:2014年1月 定価:上下とも¥1,728(税込)
入手経路:地元図書館にて貸出し

えええっ、原作はソートー閣下の一人称なのーっ。
すげーなー。会話が全然絡み合ってないのに、なぜか成立してる(笑)。
映画でもあった秘書にホロコーストの事実を突っ込まれるとこは、小説で読むとそこら辺の解釈の齟齬が際立って面白い(と言ったら不謹慎だろうか。いやだから、小説としてinteressantなんであって、別に歴史的事実がkomischなわけではない)。
映画では狂言回しだったザバツキーはあんまり目立ってなかった。というか、小説と違って彼の視点で映画にしたのってすごく良かったと思う。おかげで、
「何者だ、コイツ…」
「意外と面白いかも…」
「え?ちょっとヤバくね?」
「おかしいのはそっちだー」
というザバツキーの立ち位置が、そっくりそのまま鑑賞者に帰ってくるというか。
小説のラストは、そらもうソートー閣下が意気揚々と未来への意気込みを語ってらっしゃるところで終わってて、それも現在進行形で怖いが、映画はホント秀逸だった。

にしても、後書きにも書いてあったけど、訳者の御苦労がしのばれます。
訳しても通用しないドイツ国内でウケてるネタとか、ドイツ語だから成り立ってるシャレとか、カンペキに日本語にするのはムリだよねぇ。
しかも、タイムスリップしたソートー閣下が現代ドイツで大暴れってとこからして、彼の時代の言葉と今ドイツ人が使ってるドイツ語じゃ違うだろうし。
それでもムリなく読めたことがWunderschön!


↑映画のオリジナルソングかと思ったら、1965年の歌だったのね〜。

伯母の殺人

  • 2016.07.24 Sunday
  • 21:35
「三大倒叙ミステリ」の一つである『伯母殺人事件』読了。


原題:“The Muder of My Aunt”
著者:リチャード・ハル  訳者:大久保康雄
出版社:創元推理文庫   定価:¥691(税込)
発売(初版):1960年1月 入手経路:地元図書館にて貸出し

「倒叙ミステリ」とは。最初から犯行、犯人が提示されており、犯人の視点から物語が展開されていくもの。この物語の犯人は、書き手でもあるエドワードという名の青年。彼は資産家の伯母の家に居候しているのだが、いつまでたっても元気で嫌味な伯母に辟易しており、遺産目当てに彼女を殺害する計画を立て始める…。

という緊迫感あふれるミステリのように思えますが、実際はイギリスの田舎(ウェールズ)を舞台におバカな紳士としっかり者の伯母の攻防戦に、巻き添えを食らうのどかな村人たちが出てくる、実に英国小説っぽい話。
とにかく犯人役のエドワードがいつまでたっても犯行を実行しないし、やっと伯母殺しの算段を付けたかと思ったらことごとく失敗し、それを本人による手記(という体裁を取っている)では「あとちょっとだったのに!」と書いている割に、読んでるこっちは「どこがだwww」と失笑してしまう稚拙さ。
で、結局彼はおばさんをあの世に送って、遺産をせしめたかって?
もうそれは是非、最後まで読んでお確かめください。

超ミラクルなどんでん返し!

が待ってます。

ミステリ以外の部分、ウェールズの風景描写や、有閑紳士の過ごし方とか、お屋敷の食事風景とかそんなのも楽しめて、イギリス好きには一挙両得。

ファミリーヒストリー in台湾

  • 2016.07.15 Friday
  • 20:41
又吉先生が芥川賞を受賞した時に、直木賞を受賞した作品がこちらになります↓


著者:東山 彰良 出版社:講談社
発売:2015年5月 定価:¥1,600(+税)
入手経路:地元図書館にて164人待ちの末貸出し

去年の秋だったか、BSの又吉先生出演の番組を観てたら、『流』も紹介されててこれがまた大絶賛。既に『火花』を読んでたわたしには、それなら『流』も読んでみようかいと図書館に申し込んでから実に八カ月が経ちました(笑)。
順番来たとき、わたしの後ろにまだ32人いたからね。
いや、でも待った甲斐があったわ。なにこれ、超オモロいんですけど。
時は民国建国の父である蒋介石が亡くなった1975年。舞台は台北。主人公の秋生は17歳の高校生。
ピュアであるが故にエリートコースを踏み外したり、アウトローな世界を垣間見たり、初恋に萌え萌えしたりする明るく悲しい青春小説。
…かと思いきや、祖父が殺され、有ろうことかその第一発見者となってしまい、どうしてもその真相を暴きたい、という推理小説でもあり、かつ、一族のアイデンティティを求めてやがて大陸へ渡って、真実と相対するという教養小説っぽくもある。
しかも、台湾という一種独特な国の成り立ちについても、そこらの歴史本を読むよりよく分かる。
つまり、一冊で何度もおいしい本なわけ。そら、選考委員の北方謙三氏が「20年に1度の傑作」と言うだけあるわ。

著者は台北生まれ日本育ちの台湾人。小説の豪快な祖父は、そのまま自身の祖父がモデルで、主人公は父の生い立ちを再構成したそうです。
なんというか、いろいろな偶然や奇跡が重なって「今」があるんだなと考えさせられます。
秋生周りの話はどの世代にも共通な明るさと切なさが感じられて笑いながら読める一方、彼より一世代前の「そうせざるを得なかった」苦悩や、祖父の世代の「生きるか死ぬか」の厳しい選択は重くのしかかる…。

ちょっとー、NHKさん!東山さんを『ファミリー・ヒストリー』に呼ぶ企画はまだですかー?

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